"人間と性"懇談室10月例会 感想と報告
『セックしない、できないにはワケがある』 2010年10月22日
感 想
その日の内容は話題提供者の高松アヤコさんが発表したNHKのセックス(以下Sとする)レスに関する二つの番組の要点紹介とそれに対するコメントであり、そのレジメと説明は大変よく整理されていた。想像するにこの女性は若い頃には大企業の有能なキャリアウーマンだったのだろう。そのレジメはおそらくNHKの企画書より適切にその内容を伝えている。
この後、懇談に移り、みなさんが意見を述べていった。研究会ならば、テーマについて切り口を決め内容を絞り込んでゆくのであろうが、ここでは、各人がこの題材に関してその知識・体験に基づく意見を自由に話している。
長年 防衛省でお堅い安全保障正面の研究会に参加してきた自分としては、もう少しテーマに沿ったコメントをした方がよいと思ったが、これが懇談会たるユエンだろう。
各人のコメントはいずれもその人が歩んできた人生、それによって築かれた思い・信条に沿ったもので、それぞれ味がある。大先輩の「戦中戦後期に、適齢期の女性に対して傷痍軍人(性交渉能力を喪失した男性含む)への結婚を奨励した」という話は胸を打った。それは戦争により、つれあいとなる250万人の男性を失った女性たちへの救済でもあり、また経済的な意味もあったとのこと、それにしても本当に悲しいことだ。
高松さんが主張した正しい性教育の不足と化学物質汚染原因説は全く納得できる。また「氾濫したポルノ雑誌犯人・・“タネのばれた手品”説」もある種の真実を語っている。
私の述べた「人間の希薄・単純化・・一人の人間が多くの役割を演じられない、すなわち夫(男)と父親の使い分け(スイッチ)ができない」という説は、まったく受け入れられなかった。
また懇談会の終盤にポツリと述べられた、「良い恋愛小説・映画を青春時代に多く読み、かつ観賞することが大切」というコメントは印象的であった。
高柳先生は、各人のコメント・質問に対して、いつものように豊かな性、思いやりの性という観点から芯の通った説明をされていた。
みなさんの意見を咀嚼し強引にまとめると、「Sレスは、人間関係レス、更に
人間の豊かさ、コミュニケーション力レスの一部に過ぎない」というような結論が見えるのではなかろうか?
Sレスという“人間として不自然さ”を解決するには、総合的な人間性の回復、すなわち人間の豊かさ、厚み、おもしろさあるいはコミュニケーション力復活が大切ということ感じた次第である。 (彦坂 洋一)
話題提供者のレジメと話しあいのまとめ
<セックスしない、できないにはワケがある> 高松アヤコ
今年6月23日のNHK「朝いち」で、NHKらしからぬ番組「まじめに考えるセックスレス」を偶然見ました。以前からこの問題に興味を持っていたので釘付けされ、今回の話題提供となりました。
朝いちの番組〜まじめに考えるセックスレス
セックスレスの定義について
“特定のパートナーがいるカップルに一ケ月以上性交がないこと。”(性医学会による)
事前のアンケート(対象40歳台)によれば
貴女は今セックスレスですかの問いに Yes 60% No 40% (女性の回答)
※10年前は Yes 30%
Yes の内訳 @悩んでいる 8.3% A気がかりである 28.1% (@+A=36.4%)
B構わない 37.2% Cその方がいい 21.5% (B+C=58.7%)
ちなみに男性の回答は
B 構わない? 37.8% Cその方がいい 5.9% (@+A=43.7%)
以上を踏まえて、番組では前半3人の覆面座談会の様子が流れ、セックスレスの実態が紹介されました。Aさんは結婚歴17年、セックスレスになって1年。Bさんは結婚歴17年でセックスレス歴12年。Cさんは結婚歴18年、セックスレス歴5年。セックスレスの背景で共通して言えることは、女は子育てに夢中、男は仕事に追われ「お父さんお母さん役」から男女の関係へとうまくスイッチできないケースが多く見られると言うことです。冗談っぽくは言えても本気では言えない、これを言うと傷つくのではと自分の心の声に蓋をする。そして放置した結果セックスレスに。そうなっても夫婦関係は良好なので支障が無いという事実も共通しています。夫婦の関係が家族愛・人間愛になってしまって、男と女の関係が再構築されないでいるのです。
同じく40歳代の男性の言い分として、
@妻が外見を構わなくなる Aお母さん口調で小言を言う B給料やお金に対して不満を言う
要するにセックスレスは寝室からではなく日常生活から起こると言えます。妻のこうした言動が夫の気持ちを挫く結果となります。欲求だけをぶつけても駄目で、指示的、支配的な言い方は男性は反発します。そういう言い方は母親の姿と重なってセックスの相手として見れなくなるからです。男性もちょっとした一言で傷つき、デリケートなのです。
ある漫画作家の体験談
ここで一人の漫画家(女性)、たかせシホという39歳の作者が登場(DVDで)します。「ごぶさた日記」という作品で次のように触れています。
二人目の子どもを出産した後、育児と仕事に追われ、セックスレスに気付きショックを受けた。夫は46歳のサラリーマン。勇気を出して夫に本音を語った。私をいつまでほっとく気? 夫にも言い分があった。下の子が生まれたとき、めまいや腹痛でいつ見ても体力的にボロボロだった姿を見て性欲なんかわかなかった。やってる場合じゃないと思ったと言う。その言葉に妻は「自分の身体を気遣ってくれていたんだ」と気付き、それからは“ごぶさた”から“ひさびさ”へと変わった。
この体験で分かるように、互いが普段の生活で助け合い、いたわりあうことが大切だと。セックスレスは会話レスから始まるので、本音で気持ちを話し合える関係が重要だと思い知らされたのでした。
「福祉ネットワーク」の番組から
先述の「朝いち」とリンクして教育テレビの「福祉ネットワーク・キラキラ40」でもこの問題を取り上げていました。ここではセックスレスの問題と「性機能障害」の二つについて放送されました。
セックスレスの問題については、朝いちの番組とだぶる話が多かったので割愛します。
性機能障害について
FSD 女性の性機能障害FSDの原因には身体的理由が3割、心理的理由が7割と言われています。
特に出産後、育児と仕事に追われる生活が続くと、本来の性欲が生じず興奮もしないので性反応が
うまくいかなくなるそうです。症状として、
以上のような感覚はFSDに罹っていると思われます。出産後はしたくなくなるのがごく普通で、主たる原因にホルモンのバランスが崩れ機能障害となるケースが多いようです。
<体験談>
ここで「出産後のセックスレス」=FSDを克服したご夫婦のことに触れたいと思います。
出産後自分(泌尿器科の医師)がセックスレスだと気付き、何ヶ月も悩んだ末夫に気持ちをぶつけます。セックスしないでも平気なの? と聞くと、性欲がわかないと答えます。もう女ではないのかと落胆し、辛かったと言います。
そして二人で次の三つのことを努力し合い、工夫し協力し合ったのです。
@ スキンシップを増やす A 非日常を演出する B 夫に希望を伝える
こうすることでいつも一緒にいる感覚を持てたと言います。わざわざ二人でお出かけする日を月に一度設けるという非日常が、二人の間を縮めたのかもしれません。そして互いに「こうして欲しい」「こうしてくれたら嬉しい」という “わたし”の感情を素直に伝える大切さも実感したと言います。肩もみ、指圧、キスなどのスキンシップが増えると、いたわり合い助け合いの感情が芽生えてきて、性交渉へ移行しやすい状態が生まれてきます。これがセックスレスの解決への秘策と言えるかもしれません。
40代と言うともう生殖としてのセックスではなく、コミュニケーションとしてのセックスが大事となってきます。夫婦の関係性をどう築くかで老後の生活に大きく影響してきます。パートナーと真剣に向き合うことの大切さを教えられました。
ED 25歳以上の男性の4人に一人が罹っていると考えられています。
1,130万人と推定されていて、91万人が治療しています。(8.1%)仕事からくるストレスや不況からくる賃金カットなどの心の傷をかかえ、患者が増え続けています。
心因性のものと身体的なものとがあります。
いわゆる勃起障害(ED)は見分けがつかない面があります。専門家の見解では3回連続してできなかった場合怪しいと思ったほうがいいそうです。今は心因性・身体面の両方に効く薬が開発され、日本でも使用可能となっているそうです。
その他の障害について
○未完成婚・・・結婚して一度もセックスのない夫婦
カウンセリングが必要。時間がかかる。
子宮と膣の一部を切除したある女性は、女として不完全で夫を満足させてあげられないとい う悩みを抱いているが、その悩みを伝えることができない、言ってはいけないと苦しんでいる。性交以外で楽しめる方法を双方で考えることなどが重要かもしれません。
個人的感想
「セックスレス」の問題もそうですが、現代における凶悪犯罪や子どもたちへの虐待などを考えるとき、この日本で何よりも必要とされているのは「健全な性教育」だと思わずにはいられません! セックスレス化をどう食い止めるのかは、健全な性教育とゆとりの持てる社会の誕生にかかっているのではないでしょうか? “性の健康を”をモットーに、誰もがセックスをエンジョイし人生を楽しむことができる世の中を目指せればどんなに素敵でしょう。
話しあい