"人間と性"懇談室7月例会 感想と報告

話題提供  『認知症による性欲昂進の父と向き合って』  

感想 

 認知症と診断された父親の性的逸脱行為に困惑している家族の悩みを述べられたが、聞いていると入所先の施設側の理解不足や介護の対応の未熟さが感じられた。

 老人でなくても不安があれば誰かに頼りたい甘えたいという傾向が強くなる。病気になれば心細さから愛情の欲求も強くなる。介護者から優しくかまってもらいたくても「気持悪い」と避けられればますますおかしくなる。父親は陰部に薬を塗ってほしいなど、周囲の愛情や関心を求めているようだ。

 私(介護福祉士)の体験からいえば、問題患者としてトラブルを起こす人は「愛情に恵まれていない人」が多い。このケースの男性は、60代に入って間もなく妻を亡くし、同居はしていても仕事に忙しい息子さんとは話す暇もなかったのではないか?

 まじめで草食系という父親に妻亡き後、どんな生きがいがあったのだろう。夢中になれる何かがあったのだろうか。晩年に愛情飢餓状態になった老人にはあたたかく接してほしい。それが介護者の仕事だ。いやらしく考える人こそいやらしいのだから。 (篠崎延子) 

 

父のプロフィール

発症以前

 妻に頼っているようなところのある、今時の言い方をすれば「草食系男子」のような、おとなしいタイプの男だった。浮気をしたこともなかった。63歳の時に妻が亡くなり、その後「再婚したい」と漏らしたこともあったが、72歳で発症するまでは、忙しい仕事であまり会話もなかった息子との暮らしを続けていた。

 

発症後の経過

 「妻が浴室にいた」などの幻覚が起き、取り合わせの妙な服を着るなどの症状が出たので、1週間くらいは様子を見ていたが、その後はディサービスなどを利用し、在宅介護に入った。

 「老健」入所へのつなぎとして、短期の入院もしたが、発症後1年足らずで「老健」に入所。新薬服用の理由で、半年後にはグループホームに入所換え。

入所後数ヶ月で、施設長からの呼び出しを受けた。夜中に指導員室に入り、若い指導員に対して「性器が痒いので薬を塗ってほしい」と言って性器を見せたり、同所者の男性に自慰を教えたりと、性的逸脱行為があり、集団生活に支障がある。若い指導員は辞めると言うし、施設としては運営上の困難が出ている。このままでは退所して貰わざるを得ない。との話が出された。

 父には「このままでは行くところが無くなりホームレスになってしまう。精神病院の「保護室」に入れて貰うしかない」などと「脅し」まがいの話をした。施設では夜勤を男性職員に変えるなどの対処をしてくれた。その後、精神科のドクターから「おとなしくなるような薬がある」との情報を得て、施設長とも相談の上、服用させることにした。現在はその薬の効果か、特に問題となる行為は見られなくなったので、グループホームで安定した生活ができている。

 

話しあい

・ グループホームは「人間の施設」で、サービス業でもあるから、人間とは何か、人間の性とは何かについて の学習をしてほしい。施設長がどんな思想を持っているのか知りたい。

 

話題提供者からの感想

 父は、妻に死に別れた後10年くらいも性を抑圧させて生きてきた。私自身が、老いても性的存在であることに気づいていなかったので、父に対して「脅し」まがいの言動をしたことを申し訳なく思うようになった。きょうの話を聞いて、性を肯定できるようになった。父に対しても、今までとは違った接し方ができるようになる気がする。話を聞いて貰って良かった。