"人間と性"懇談室5月例会 感想と報告

                                                    2012年5月30日

 『男がいて女がいて
     〜日本の男と女の関係性の歴史
』  報告者:高柳美知子

                         

    

 ★ 例会概要と感想

 

 

 「男女関係と日本の婚姻の歴史」。研究所初代所長・山本直英さんのテキストを話題提供として始まりました。

 古代、愛はおおらかな心の発露であり、性愛についての道徳的判断などなく女と男は自然に結びついていました。

 その後、招婿婚→妻問婚→婿取婚→嫁取婚と変遷を重ねる中で成立した一夫一婦制が、階級社会の成立とともなって階級差別、女性差別という枠の中へ収まっていきます。明治以降も家を中心に結婚は強化されますが、そんな中でも女性解放の叫びが起こり、新憲法下では個人の意思によって男女平等な結婚が保障されることになりました。

 現代ではかなり自由結婚に近いものになってきましたが、この先、結婚の歴史は再び「制度から友愛へ」という方向をたどるかというのが話題提供の主旨でした。

 

 一夫一婦制が子孫を残すという生殖の面から見ても良い制度としてこれからも残るという肯定的な立場から見たとしても、そこから生まれる弊害も見過ごすわけにはいきません。

 まず、私有財産の発生にともなって生まれたことで、階級的な差別、経済的な支配、女性蔑視とかさなり個人の人格が支配されます。なかでも性愛は個人の人格に帰属するものということが軽視されます。

 近年、核家族化・家庭崩壊現象がすすむ一方、女性の社会的進出も顕在化するなかで、男の役割り・女の役割りが問い直されてきています。育児や家事に参加できない男は要らない。老後の男たちは周囲から疎外され濡れ落ち葉に。過去の制度や社会通念によって保護されてきた男の生殖能力さえ低下する(草食男子)傾向が見えてきました。

 しかし、性についておおらかになれない社会のありようは相変わらず、不倫という言葉が飛び交い、二股交際がテレビを賑わせています。不倫は自分の人生を賭けているから愛は純粋。経済的に夫に従属して楽をしている主婦より体を売っても自立している方がまし。そうした言葉だけでは済まされない現状です。

 

 とりあへず、男社会→女社会へ、男の支配から女が選ぶ時代へとすすめて行くなかでこれらの課題が処理されることに期待し、男女平等も民主主義もその先にあるのかなと考えます。さしあたりの問題としては、一夫一婦制のモラルを規範とした中に性愛を閉じ込めないで、人間の生殖の性・文化の性を考えてみたいというのが私の提案です。(青木 清)