"人間と性"懇談室1月例会 感想と報告

                                                    2013年1月30日

ジェンダー・男女の性差をどう認識するかージェンダーカルタから  

                      報告者:青木 清                         

    

 ★ 例会感想

 

 

 ジェンダーについて考えるというなかなか奥の深い話題での例会。

 レジメ報告後、参加者が感想を述べたが、一人ひとり「想い」が異なり、参加者が16名と多かったこともあり、時間切れでそれぞれの発言が言いっぱなしで終わってしまったのは惜しかった。もう少し時間があれば、論議がかみ合って深まったと思う。

 歴史的、文化的につくられた男らしさ、女らしさではなく、その人らしさを中心におくことに参加者の異論はなかった。しかし、一般的には男性の方が女性より筋力が強いなどの男女の生理的特性や思考の特性と、男女平等をどう考えるかが出され、すべてを同じにするということで括ってしまうと、現実には無理が起きることもあるとの発言もあった。どうかね合わせるかが課題であろう。

参加者の多くは男女の特性は認めたうえで、それが差別に繋がらないことが大事ではないかと考えているように受け取れた。

 参加者の一人が、男と女の共通性や特徴は、時代とともに変化する。男女差別は支配の道具としてあったのではないか。男女がどうかではなく、人間がどうあるべきかを考える必要がある。人間はどうあるべきかを論ずれば良いのではないか、と発言されたのが印象的だった。

   

 ★ 例会レジメ

   

 

ジェンダー・男女の性差をどう認識するか。

 ジェンダーとは・・・社会的、文化的に形成される男女の差異。男らしさ、女らしさといった 言葉で表現されるもので、生物上の雌雄を示すセックスと区別される。

 敗戦日本の再出発から現代へ

1945年の敗戦から始まる日本の女性史は、絶対君主制の天皇制の崩壊により、それまで社会の機軸をなしていた家父長制の終焉、そこからの女性の解放から始まります。女性の参政権・男女合意のもとでの結婚制度・等々新憲法の設定をまってその一歩が印されました。

 しかし、そのことはかならずしもすべての社会において、すべての家庭において女性の権利が獲得されることや差別や被害から開放されることを約束されたわけではありません。それまでの戦争追行政策のなかで、青年だけでなく壮年の男子までも軍隊に駆りだされ、生産現場や社会全般からの労働力不足・人材不足を補うために女性が起用されてきました。そのことを女性の社会進出・女性の権利の拡大と位置づけた女性活動家たちはそれまでの反戦・平和のスローガンから離れて戦争協力へと運動を収斂させていきました。戦後、そのことの反省から女性運動は、「歌声よおこれ!」の合言葉から反戦平和を前面に掲げて始まりました。

 それからの日本は、独立・日米軍事同盟の成立・高度成長経済・グローバル日本と大きく変化するなかで女性史も多様な変遷をおくり、その要求するところも多様性を帯びてきました。

 70年代のウーマンリブ運動は、女性の存在の主張として男性中心的な論理を排して、あらたに性差別の構造を明らかにすることでした。更に80年代では、伝統的な女の生き方の見直し・女の自立が大衆的なテーマとなっていきました。そこからキャリヤウーマンの登場、テレビでの女性キャスターの登用などが社会現象となってきたように見えます。しかし、上り坂に見えたこの現象も21世紀を向かえ微妙に変化します。バブル崩壊から下方修正を余儀なくされた日本経済、その再生?を口実にした構造改革は、女性に対しても男性に対しても貧困差別という新たな構造をつくりあげました。

 女性専科のように使われていたパートにあらたに派遣・フリーター・ニートなどという呼称が生まれ、男女の差別を超えた低賃金構造のなかで、あらためて男と女の役割り、差異が見直される時代になり、ジェンダーという言葉が市民権を得ることになりました。

 この言葉の背景には、第2次大戦中の産業現場への女性の進出からイギリスなどで、男は戦争グループ、女は平和グループとして平和という意味もあるようですが、現代では、なによりも人権を守ることが始まりであり目的となっています。日本憲法でも人権は明記されていますが必ずしも保障されたものではありません。

 そこで各自治体が、人権擁護の立場からジェンダーを取り上げて、その啓蒙・普及活動に力を入れています。その具体例として熊本県八代市の「ジェンダーかるた」があります。男女共同参画社会づくり・八代みらいネットが完成させた啓発かるたです。

 

 このカルタを題材にしてみました。話しを進める便宜上8のグループに分けてみました。(その他のものもあります)

1群 ここでは永い間に刷り込まれた家族間の意識の改革を呼びかけています。主人・嫁とかに今は特に意味はないが、呼び方にこだわることで意識が変わるのか?

「進めよう 意識改革 家族から」「嫁さんは 家に女と 書くけれど・・・」

「とっさには 夫がでずに つい主人」「平等と いった先から おーいお茶」

 

2群 家庭内での夫婦のありよう、役割分担が家事だけが妻に偏らないようにすることも大切ですが、頼りあうだけでなくそれぞれが自立していることも重要では?

「あってよかった 大黒柱と 二本どま」「娘より 手慣れた夫の アイロン掛け」

「我が家では 事業よりも 家事仕分け」「ねぎらいの言葉かけ合い 思いあう」

3群 年寄りが家庭内や地域社会から疎外されないということが、主に男性に向けられているのが問題か? 老後の疎外感は女性にはないのか? 自立?疎外?

「濡れ落ち葉 粗大ゴミからの脱!宣言」「作りましょう自分の居場所を 生きがいを」

「家事できる あなたの老後 まず安心」「老若男女 集い語らい 共同参画」

4群 男女共同参画社会づくりが意識の変革だけでとどまると限界があります。特に育児になるとその限界が見えてきます。家庭を労働力の再生産の場ととらえると、再生産に必要な賃金の保証や育児・教育の環境の充実は国や地域社会の責任。

「仕事と育児の両立で 小子化社会 脱出だ」「産むつもり あなたの協力 期待して」

「今度こそ 育休とるぞ 第三子」「いまどきは イケメンよりも 育メンだ」               

5群 趣味は料理という男子が増えています。「男子厨房に入るを許さず」その典型を担ってきた熊本ではこのいまどきには抵抗感が在るかもしれません。このことで手抜き主婦・手抜きママは解消されますか? その隙間に外食産業・コンビに弁当・おかず産業が繁盛してきています。家庭をつなげているものは食(料理)だけか?

「ルックスより もてる条件 クッキングー」「オムライス 僕も作れる ママの味」

「夕食の リスト片手に 退社する」「口数ほど 作ってほしい 皿の数」

6群 思いやり社会・やさしさといった言葉だけではなまぬるさが感じさせられます。人権意識や人格を重んじるという感覚が欠如している村社会に原因はないか?

「気づいてる メディアの中のジェンダーに」「携帯の メールチェックはいやなもの」

「束縛も 愛されていると 勘違い」「デートDV 中高生に 増えてます」

7群 教育現場からの男女差別の克服と男らしさ・女らしさの押し付けをを排除することで解決することも多いようですが、性の違いを教える性教育も大事では?

「伸びる訳 適材適所 性問わず」「保健室 男の先生 まだいない?」

「ランドセル自由に選んで 好きな色」「男女別 分けたりしないで 混合名簿」

8群 個人の意識の変革と環境整備。これと同時に普遍的な理論の確立と思想の普及が望まれます。

「セクハラよ! 嫌だとはっきり 意思表示」「参画で 職場に活気 家庭にゆとり」

「なぜ付くの? 職種の前の“女”の字」「チャレンジは誰でも いつでもどこででも」

 

 

 

 

ジェンダーかるた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1群は家族間の意識            2群は家庭内での役割り分担

 

 

  ★  質疑・話し合い・意見  参加者16人