"人間と性"懇談室5月例会 感想と報告

                                                    2016年5月23日

    『 山本宣治の足跡に学ぶ   

                   話題提供

 

● 金子所長の解説

 研究所(”人間と性”教育研究所)が、協議会(”人間と性”研究協議会)の活動を広げる趣旨で設立されたときから、初代所長の山本直英には「山宣」(山本宣治)への思い入れがあった。

 山宣は、一般人の興味関心がない時代に、科学者として、月経指導、初経指導など、女性に対する性教育をした。女性だけでなく、男女ともにする性教育は、山宣から始まった。

当時は、女性に主体的な選択する力を付けさせたくない考え方があり、妊娠・出産が国にコントロールされていた。そのため、産児制限の話をしても、具体的な話になると「弁士中止」に追い込まれた。

 

セクソロジストとしての活動は、数年の講演活動しかなかったが、当時「手淫」と言われていた言葉を「自慰」と変えるなど、影響は大きかった。

性に対するタブーを取り除き、正しい知識を持つことが、セクソロジーにつながる。

『武器なき斗い』にも出てくるが、「山宣ひとり孤塁を守る。だが私は寂しくない。背後には大衆が支持しているから」との有名な言葉を残している。

 

研究所では、山本所長が、山宣の墓がある彼の生家「はな屋敷」近くの墓地に、山宣の性教育顕彰碑を建てた。建立後数ヶ月で山本所長は死去した。

性は政に通じているとの考えが研究所にはあり、それが協議会との違いになっていった。

 

● DVD『武器なき斗い』鑑賞(山本宣治の生涯をえがいた山本薩夫監督映画 1960年公開)

 <性教育に関わる場面の言葉の抜き書き>

・ 京大での性教育授業の場面より

 男子は成余れる部位を持っている。インターコースつまり性交である。一億六千万の精子が一斉に動くのだから、厳しい競争になる。

・ 産児制限講話の場面より

 子が生まれると、食わせねばならぬから金が要る。貧しいのにますます貧しくなる。今いる以上の子が生まれては困る。産めよ増やせよといっても、政府はビタ一文くれない。どうしたら子を産まなくてすむか。それが知りたいところ。

 (講話終了後、具体的な話を個人的に質問されていたことを連想させる場面が入った)

 

 (上映時間が140分という大作のため、時間内にはすべてを視聴できず、代議士当選までの視聴で終わったが、性教育に関わる場面は前半にあったので、既に読んでいた文章が映像化されていて感銘を受けた)

 

・ 若い頃の著名な俳優陣が多く出演していることも、楽しく鑑賞できる要素となっていた。

山宣―下元勉  妻千代―渡辺美佐子  父―東野英治郎  母―細川ちか子   

本田(学生)―中谷一郎  清(農民)―小澤昭一  谷(地下党員)―宇野重吉  三浦(教授)―信欣三  

長船(大地主)―河原崎長十郎  大上(大地主)―小沢栄太郎  杉森(親分)―多々良純  

北島(刑事)―田中邦衛  木村―山本学  (文責 岩淵成子)