"人間と性"懇談室4月例会 感想と報告
2016年4月25日
『「百合祭」−老いのセクシアリティの可能性を考える―』
話題提供:青木 清
● 『百合祭』の解説
北海道出身の桃谷方子の同名作品が原作で、以前に出版された。
出版当時は少し評判になった。高齢者の性を扱った本として有名になった。
浜野佐知監督による映画は、愛知国際映画祭、京都女性映画祭などに出展され、受賞している。
● 『百合祭』のDVDを鑑賞後の話し合い
- 映画を見て、後ろめたいこともある。生命への高揚感がよく出ていた。
- 現在、高齢者が3割になってきた。2050年には5割を超すと言われている。高齢者には女性が多い。身体は衰えても、精神は若くありたいと願っている。
- 高齢者は、身体と心が衰えると言われている。しかし、感性や行動力は衰えない。それらが表面化してくるために、問題が多発している。高齢者は枯れると言われているが、実は現役。抑制が効かなくなるため、理性のタガが外れて、性が表に出てくることもある。優しくなるか、頑固になるかに分かれる。
- 新聞への投稿で、不倫に関する記事があった。乙武氏の行為が許せないとの内容。不倫を是とする人々は、人生の大切なものを失う事になると思うと書かれていた。
- 妻が謝ったが、謝る事ではないと思う。身体障害での活動はすごいと思うが、いろんな女性と付き合ってしまうタイプだと思う。手足のない人で、機能的にセックスは困難であるわけだから、女性が積極的に関わらねば成立できないはず。積極的に関わろうとする女性が、複数居ることに驚いた。結婚した女性にも驚いたが。
- 本人ができるかどうかより、相手と自分の問題だと思う。人間と性について考えれば、障害者にとっての性も考えられる。
- 心の闇を覗いた気分になった。身体に対するコンプレックスを持っているのではないか。誰かに愛されたいと常に思っているのではないか。それが男と女の関係になった時に問題が起きる。
- 男は一見幸せそうだが、闇を埋めるために、次々女と関わるのではないか。
- 『キャタピラ』という映画を考えた。男も女も闇を抱えているのではないか。闇は魅力的でもある。特別の関係だから得られる喜びがあるのではないか。
- 『チャタレイ夫人の恋人』でも、闇を考えさせられた。
- 『百合祭』の男も不倫の関係があって、妻から別居させられてアパートに来た。女性たちの中のひとりの男性だから「白雪姫とこびと達」として象徴的に描かれる。姫が男になっている逆バージョンだが。
- 性的機能は備わっているが、人と人の関係は変わっている。それをどうしていくのか。闇を抱えていることで悩んだのではないか。
- 高齢社会になって、高齢者の性に話題性が出てきたのに、「ホーッ」と思った。高齢社会になって、問題が出てきたのを感じた。
(話し合いの時間が短く、参加者も少なかったため、映画の内容に関しては、深まりに欠けた話し合いになった)
● 映画の概要
73歳の宮野さん(吉行和子)をはじめ、中原早苗、原知佐子、白川和子などが演じる7人の老嬢の住むアパートに、75歳でダンディな三好さん(ミッキーカーチス)が越してきた。お婆さんとしてではなく、レディとして扱われることで、住人の老嬢達はすっかり彼の虜となる。宮野さんは、彼とのセクシュアルな接触で、若い頃のセックスとは違うが、体を重ねた時の柔らかな感触に陶然となった。
二人だけの関係と思い込んでいたが、そのうち彼の過去と実像が見えてくる。死別で独身ではなく、不倫がバレて妻に別居を迫られての引越しだったとか、自分だけとの思い込みははずれ、複数の住人と性的関係を持っていたとか。
住人達は驚き怒るが、いつまでも「騙された」などと恨み言は言わず、果敢に「生き直し」を開始する。