"人間と性"懇談室11月例会 感想と報告

                                                    2015年11月30日

    田丸まひるの短歌に見る 恋・性・生きる  

                   話題提供:青木 清

 

● レジメ補足

 ・ 栗木京子の短歌は、文語体での新しい感覚で生み出された短歌である。

  彼女の場合は、恋を理想化している。

   ・ 俵万智は口語体の短歌である。日常的な言葉で詠んだことにより、短歌の一般化に功績 があった。多くの人に短歌が読まれるようになった。

  彼女の場合は、日常的ななかで恋を捉えている。

 ・田丸まひるは、恋・性・愛が抽象化されて、概念になってきているのではないか。

 

● レジメの短歌に基づく参加者の選歌と意見交換

 

● 全体を読み通しての意見交換

 

  ● レジメ

  「田丸まひるの短歌に見る―恋・性・生きる」


◎観覧車回れよ回れ想ひ出は君には一日 我には一生     栗木京子1954年生まれ。
◎「この味がいいね」と君が言ったから  七月六日はサラダ記念日    俵満智1962年生まれ。


 先の2首は現代短歌を代表する恋歌。これに対して新感覚ともいえる田丸まひるの短歌から現在進行の恋や性、女性の生きるを検証します。

    

◎田丸まひる。1983年、徳島県生まれ。 精神科医。・2004年「晴れのち神様」
・2014年「ガラスのボレット」を上梓

◎愛してる どんな明日でも生き残るため  ガラスのボレット(弾丸)を撃つ
◎レトリック、できればたった一片の  硝子の弾丸(たま)に打ち抜かれたい

◎小糠雨のようなセックス  ずっとずっときれいなからだでいたい
◎花びらのように誰かの手袋を  めくりましたか わたしの前に
◎いつの日か官僚になる友達を  ジギタリス咲く裏庭で抱く
◎男のひとは体のどこにきしきしと  女のひとを入れるのですか
◎裏側に入れてほしくてあたらしく  覚えてしまう脚の曲げ方
◎人魚ならこんなに足を開かずに  受け入れられたのでしょう
◎スカートの奥の夕日を  裏返すような行為をうまくできない
◎バスタブはそういうことをする場所じゃない  夜を飛ぶ鳥を見ていた
◎花飾りつきのヘヤピンすべり落ち  冷たい床で待つ絶頂期
◎みたされていてもふるえる冬銀河  足の指には歯を立てないで
◎騎乗位はユートピア でも散らばったレースを拾いたい薬指

◎ほどかれるためのかよわい肩紐の 下着を選ぶ激務予想日
◎もぎたての不定愁訴をぶちまけた  診察室の壁が震える

◎父親になってくれないひとなんか  捨ててしまえと書く診断書
◎くちびるの感触はなぜひとりひとり  違うのですか に答えられない
◎こいびとが三人いれば三倍の しあわせですか に答えられない

◎こいびとを三人くらい捨てた頃  セブンイレブン四国進出    

◎こいびとのひとりひとりを街路樹に  縛りつけたら燃えるのですか
◎こいびとのかたちに沿って生きていく  身体にのばす冷えたワセリン
◎やわらかく煮込み終えたら性愛の  つづきをしよう明るい夜の
◎夜ひとつ越えてもいつか死ぬくせに  足は絡めたままにしといて
◎ニューソックス片足立ちで脱ぎながら  いつかわたしはぼろぼろになる
◎しますか。しないのですか。 今もまだ日暮れのようなわたしの体
◎もう一度。こわいのは愛があるってこと  なじられている。波。愛している。

◎あなたからわたしの名前匂うから  家族になろうなんて間違う
◎スプーンを使いこなして わたしまで  すくいとるなら結婚してよ
◎ずっととけない氷がほしい あなたとは  ほんとうに家族になりたかったんだよ
◎まちがって昨日結婚しなかった  わたしを褒めて過ごすいちにち
◎あたたかい言葉まみれの  決別の手紙ちいさくたたむ
◎もう誰を好きになってもかまわない  あなたの手から飛び立つ素足