"人間と性"懇談室5月例会 感想と報告
2014年5月23日
「映画で見る"人間と性"の普遍性」
話題提供:高松アヤコ
★ 話題提供者レジメ
〜映画で見る”人間と性”の普遍性〜
「あなたを抱きしめる日まで」を見て
イギリス映画「あなたを抱きしめる日まで」を観て衝撃的な感動を受けた。2009年、イギリスで出版された実在するアイルランド人の主婦フィロミナ・リーの物語。突然奪い取られた息子を探し続けて50年。まるでミステリー小説の謎解きのような経緯をたどり、遠い異国で思いもよらない真実を見出す。
真実@ カトリックの修道院が子供を売っていたという衝撃的な事実。
A 探し求めていた息子は30代で亡くなっていた。
B そして彼は同性愛者であった。
この真実に向き合うフィロミナの精神の潔さに心打たれる。
<映画のポイント>
《映画から読み取れるもの》
・映画の中で養父がとても厳しかったことを妹のメアリーが語るが、早い段階で養父はマイケルの性的指向に気づいていたのかもしれない。
父に拒絶されたマイケルはエリートの道を邁進。
父に認められなかったマイケルが、いくつもの意味
で不安を抱え葛藤したのだろう。だがこのことが主題
ではない。実の母の愛を求めてゆく姿に胸が痛む。
同時に、拒絶と受容、政治と個人について考えさせ
られる。
・アイルランド共和国において、カトリック教会が否定する離婚、避妊、中絶など少しずつ認められるようになってきた。(中絶はいまだ制限があり、毎年多くの女性がイングランドにわたって中絶手術を受けている。)また同性婚も別格という形で認められるように。
・ロスクレアの修道院のシスター・ヒルデガードの冷酷な表情と言動。キリスト教が本来の精神からかけ離れてしまっていたことへの驚き。こうした過去は事実であるし今でも癒しえない傷になっている。教会の養子斡旋事業は1940年〜70年代にかけて行われた。しかし脚本家はカトリック教会を攻撃する作品にしようとは全く思っていなかった。ヒロインの、人を赦す気持ち慈悲に満ちた信仰心を描きたかった。人を赦す気持ちが醜い争いを唯一防ぐ力となる。
<話題提供>
提案@ 社会に影響を与える「人間と性」の問題
この映画に限らず、映画には“人間と性”をテーマにしたものが多く見られる。その意味で普遍
性のあるテーマであることは間違いない。また多くの犯罪がこの問題に通じていると言っても過
言ではない。
懇談室:わが内なる酒鬼薔薇聖斗・東電OL殺人事件
最近エイズがマスコミで取り上げられなくなったのはなぜか?
性的マイノリティ(LGBT)
L----レスビアン
G----ゲイ
B----バイセクシュアル
T----トランスセクシュアル
トランスジェンダー 性同一性障害を持つ人
※カミングアウト----まわりに告白すること
★5月例会感想と意見
養子制度では金が絡んでくる。婚前出産者の子を3歳くらいで養子に出す。謝礼ということだが、客観的には人身売買と取られかねない。
子どもがほしいという理由に、自分の戸籍を残したいという想いがある。日・中・韓は家族主義であり、戸籍制度がある。欧米は個人主義で、戸籍制度は無い。家族主義と個人主義の違いによる暮らし方の問題がある。
日本人は墓をほしがる。年寄りの最後の望みが墓。家族か個かで墓のあり方が違う。人間を個として捉えれば、墓のあり方が変わる。西欧には墓を売買する商売は無い。
多神教と一神教の宗教の違いから来る倫理観の違いもある。
映画では、教会に対する攻撃を描きたかったのではなく、ヒロインの人を許す気持ち、慈悲に満ちた信仰心を描きたかった。人を許す気持ちが醜い争いを防ぐ唯一の力だと考えさせられた。
許すと認めるはほぼ同じではないか。宗教的には心での許しの問題。後世の宗教が倫理観を作っていった。宗教は人間の共生のためのルールの元になるもの。死が人間の恐怖になったときに宗教が発生した。財産の蓄積ができるようになったときに、宗教が発展した。財産継承権が強くなった頃に宗教が強くなった。
映画では親子が互いに想いあっていた。母は50年間、息子は死ぬまでの30年間。
同性愛にどうしてなったのかは、本人にも分からない。育て方の問題でないことははっきりしている。
成長期に性器が変わることがある。高校くらいまでの間に男が女に、女が男に変わることがあるらしい。昔からあって、今でもあると言われている。
3歳で養子に出されたら、本人が何者かを問わずにはいられないだろう。精子バンクの問題も似ている。本人は親を探すだろう。
60歳以上が増えている社会が現在の日本。今は障害者、マイノリティが勢いを持ってきている。3.11以降、他人事が崩れてきた。今後の変化に期待したい。