《ホーム》

車椅子からみた性と生

bV

COCO

車いすの歯科受診

 
 

 婦人科に続いて第二弾の受診シリーズです。

 

私の障害は歯にも支障をきたす。ということはこんなに大人になってから知った。親って結構無知である。自分の子どもに障害があることだけでいっぱいいっぱいで、どんな影響があるか科学的な知識を調べて、私に教えてくれたりする余裕はなかった。だからいまさらながら、自分で調べている。

 

で、歯科である。抜歯手術が必要になったけれど、バリアフリーで駐車場があるというだけで選んだショッピングモールに併設されたデンタルクリニックでは、障害者の抜歯はちょっと勇気がいるらしくて、地域の公立病院へまわされた。実は先の婦人科と同じ病院。いやだなぁとかなり気が重くなりながら初診。

 

でも、私は出会ってしまった。歯科医の王子様。全然おじさんだけれど。まず X 線撮影。私は乳児の頃からおびただしい回数の X 線撮影を経験している。 X 線撮影時は親も室内に入れなかったから、撮影技師からセクハラにもあっている。「 X 線=恐怖・嫌悪」だ。自分では人に気づかれるような態度だとは思っていなかったのに、撮影前に身構える私を彼は見逃さず、「歯のレントゲンはあなたがこれまで撮ってきたレントゲンに比べると、放射線量は数千分の一くらいなんだよ。大丈夫」と言ってくれた。そして抜歯のための麻酔注射。痛みにはかなり強いと自負している私だが、本当は緊張して強張っていることにこれまた彼は気づき、「怖いの?大丈夫だよ」と笑って私の肩を抱き寄せた。完全セクハラ歯科医である。でも私は力が抜けるのを感じた。

 

帰りの車中、不覚にも涙があふれた。受診に関しては百戦練磨だと思っていた。病院は大好きだと思っていた。でも、小さい頃から、受診のとき、私のまわりには、ニコニコするだけの医療関係者と、黙っている父と、娘を怖がらせてはいけないと無理やりほほ笑む母しかいなかった。そんな微妙な空気の中で、私は泣いちゃいけないとずっと思ってきた。きっとこんな回想は私の独りよがりで、両親に言わせれば私は泣いていたのだと思う。それでも。それでも、歯科医の王子様は、私にとって初めて「怖いの?大丈夫だよ」と言ってくれた人だったと思う。「セクハラだろ!」と怒る余裕もないくらい、安心してうれしかった。これまで私が病院で味わった傷つきが、癒されたような気がした。

 

セクハラで癒されている私って考えるとかなり複雑。でも、こんなふうに、物体としてではなくて、人をまるごと見てくれる医師が増えたら、患者は幸せだと思う。そして、もしまた彼に診察してもらう機会があって抱き寄せられたら、ニッコリ笑って「先生、セ・ク・ハ・ラ」って言おうと思う。