No.30
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研究所 所長代行 金子由美子 |
20012/10/13
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今の自分を磨いていこう |
思春期になると、生まれながらの生物的な特徴としての「男らしさ・女らしさ」を意識するようになります。一方、服装とか行動などの性別による“らしさ”も同じように気になりますが、それは、その時代の学校や家庭での教育、制度、文化、習慣、情報、法律などによりイメージされます。こうした影響を受ける性的な特徴は「ジェンダー」と呼ばれています。 前回、元気がない男の子が増えているという現象について書いたところ、さまざまな意見をいただきました。その中には、学校での「男女平等教育」により、男の子が「男らしく」なくなり困ったものだという意見もありました。確かに、全国の小中学校で、以前は生徒会長が男の子、副会長が女の子、といった伝統的な風習が残っていた学校で女の子が会長になったり、家庭科の時間に男の子も調理実習をするといったように、男女による性的な差別はなくなりました。 しかし、さまざまな教育に関するデータを比較してみると、いまだに大学進学率は男の子の方が上回っていたり、進路説明会の出席率を見ても男の子を持つ親のほうが教育熱心であったりする傾向がみられます。教職員の比率は男女半数もしくは女性が上回っていても校長、教頭などの管理職は圧倒的に男性であるという事態も変わっていません。また、いわゆる「三高」(高学歴、高収入、高身長)をパートナー選びの基準にしていた母親世代が、その価値観をそっくり息子の教育の物差しているように思われることもあります。 「旧態」は教育の現場に限りません。全国各地で行われるお祭りや神事で、男性がたくましい肉体や腕力を誇示する場面があったり、端午の節句によろいかぶとや金太郎人形を飾ったり、男の子に求めるイメージは相変わらず「強く、元気で、行動的」といったこと。テレビなどからの情報も、クイズ番組では高学歴や高収入の男性、バラエティー番組ではタレントやお笑い芸人が鍛えた体やイケメンであることだけを売り物にしているのが目につきます。文化や情報の中で扱われる男の子のジェンダーは、今も変わりないようです。 そうした中で、元気のない男の子が増えているという現象は、「困ったこと」なのでしょうか? いいえ、私はむしろ世の中が良い方向に変わっていく明るい兆しのように思うのです。悩めるの声の一方で、「草食系男子」という新しいネーミングも生まれているように、穏やかで優しく、のんびりした男の子が増えています。そんな動きは、旧来の文化や情報に惑わされることなく、個性的な生き方を追求していける世の中へとつながっているように見えます。 教育、文化、情報などは、そこに生きる人がつくっていくものです。誰かが決めた「(男あるいは女)らしくあるべき」という枠を取り払い、「自分らしさ」を求めるのが、これからの時代のキーワードだと思います。前回からの宿題の「元気になる秘訣(ひけつ)」―。それは「今の自分を磨いていけばいいんだ」と考えること。それはきっと、世の中を変える力にもなるのです。
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