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思春期の心とからだ

No.29

 

研究所  所長代行

金子由美子  

 20012/8/20
元気のない男の子たち
 

  私は日常的に保健室や教育相談室登校、不登校気味の生徒のサポートをしていて、同時期に二十人近い生徒とかかわっていたこともあります。

 他の生徒と顔を合わせたくないために登校前の早朝や下校後の夕方に来る人、親と一緒に来る人、一週間に一度だけ来る人、医療機関などにかかりながら来る人など、理由も登校のスタイルもさまざまです。

 これまでは友人関係のトラブルによる女の子が多かったのですが、このごろは男の子のケースが増えてきています。

 教員仲間が集まるところでも、「男の子に元気がない」「しゃべらない」という声をよく聞きます。また、実際に学校生活の中で女の子とは全く話をしない男の子の姿もちらほら。なぜなのでしょう。

 クラスにいられない、入ることができない人たちは心を閉ざしていることが多く、お互いがコミュニケーションを図ることは簡単ではありません。

 しかし時には、保健室にいる生徒同士が学年の枠を超えて、大人の私には意味がわからない「難解語」を交わしあい、交流している場面も見られます。例えば「コミケ」「コスプレ」「モバゲー」「フィギュア」「萌(も)え」といった言葉。

 それらは、閉ざした心を開く“呪文(じゅもん)”のようでもあり、元気を取り戻すためのカウンセリングをする上ではこれを解読することがキーポイントになることもあります

 ですから、彼らの発した言葉を手かがりに、中学生たちの不可思議な世界について調べたり、実際にそこに行ってみることを、私はライフワークのひとつにしています。

 若い人たちが好んで見るテレビのバラエティー番組では、タレントやお笑い芸人たちが「モテる、モテない」をおもしろおかしく対比させ、「モテない」側は笑いの対象にされたり、こき下ろされています。雑誌を見ても、中学生からすると「自分たちの小遣いではムリ」なほど高価なファッションやデートコースなどが紹介されていたりします。

 今や国民的な儀式と化したバレンタインデーも罪作りで、男の子は、幼稚園児のころから「モテる・モテない」に分類されてしまいます。

 家庭でも、経済不安が深刻化する中で、「出世してお金持ちに」という志向が高まり、「『男だから』一流大学に、立派な会社に、すてきなお嫁さんをもらって家族を支える大黒柱に」と息子を追い詰めてしまう母親が増えてきているように感じています。

 異性への関心が高まる思春期に、「モテたい」と強く思うのは自然なことです。しかし、「男らしさ=モテる=明るい将来」といった単純な展開しか想像できなければ、ルックスや体力、学力などに自信が持てない人の自己肯定感(自分を認める気持ち)は乏しくなってしまいますよね。そういう状況では元気がなくなってしまったり、「非現実」の世界に引かれていったりするのも仕方のないことのように思います。

 「だからって、どうすればいいの?」と感じた人もいるでしょう。そこで次回は、「元気になる秘訣(ひけつ)」を紹介しますね。

 

  

 

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