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思春期の心とからだ

No.27

 

研究所  所長代行

金子由美子  

 20012/6/25
危ないケータイ依存
 

 小中学生が、自分のケータイを持ち歩くようになって五年以上経ちました。私が勤める学校でも携帯所持率が九割を超えるクラスもあります。こんな状況の中で心配なのは「ケータイ依存」に陥るケースが少なくないことです。

 出回り始めのころは、持たせないと言う保護者が圧倒的多数でしたが、近ごろでは「物騒な世の中だから」「塾をサボってないかわかるから」と、子どもの安全や管理のために、むしろ積極的に持たせる傾向がみられます。

 一方、ケータイを持っている本人たちは、それを巧みに使いこなし、「女子友とのシャメ(写真メール)送っとけば、彼氏と一緒でも外泊オッケーなどと、親の思惑とは逆の使い方をするようになっています。

 現在、私のいる保健室では、ケータイにまつわる生徒や保護者からの相談が増えるばかりです。性的な興味関心が高い男の子がアダルトサイトにアクセスして高額の請求をされ親に言えずにおびえていたり、友だちのメールにすぐに返信しないと「ハブかれる」という不安から、トイレやお風呂にまで持って入っている子、プロフ(自己紹介サイト)や学校裏サイトでの誹謗(ひぼう)中傷に始まるいじめやシカト、使用料金が月十万円を超えるほど依存している子から取り上げようとして家庭内暴力が始まったケースなど、弊害ばかりが目立っています。

 なぜ、これほどまでにケータイに熱中してしまうのでしょう。中学生のプロフをのぞいてみると、その理由がわかります。普段おとなしくて目立たない子たちも自己顕示欲全開で自己アピールをしています。学校ではまじめで通っている女の子も派手なお化粧をしている姿が映し出されます。教室で人と会話するのが苦手という男の子は、絵文字フル活用で、積もり積もった思いを吐き出しています。

 自分の気持ちや思考を伝える言葉がまだ豊富とはいえない中学生たちは、「ウッセー」「ムカつく」といった単語でしか自己表現できなかったり、無口に徹したりしていることもありますが、絵文字やマークでの表現は、言葉を使わずにすみ便利なのでしょう。そんな便利さの一方で、無警戒に学校名や学年まで書いてしまったプロフで、校門で待ち伏せされたりするストーカー被害も起きています。

 思春期の心理や行動パターンを知り尽くしたうえで、商品開発をしている売り手により、ケータイの開発は止まることはありません。その分、「依存」の危険性はますます高まっていくことでしょう。しかし、学校では、次々に出てくる新しい商品や違法サイトの実態について、把握することすらできていません。

 孤独に向き合う訓練が十分にできていない思春期。つらいこともたくさんあるけれど、それを紛らわすためにケータイに頼ってしまうのは「逃避」でしかありません。たかが『道具』に振り回されないように、多発する事件報道などをヒントにして、どう使いこなすのかを考えてみることが大切ですよね。

  

 

 

 

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