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思春期の心とからだ

No.26

 

研究所  所長代行

金子由美子  

 20012/5/25
違いあってこその親友
 

 私には年の離れた親友が、少なからずいます。今回はそんな“親友”についてのお話をしたいと思います。

 この夏休み、名古屋市で開かれた研究会で私が講演する機会があったのですが、二十歳になったばかりの男子専門学校生が、地元の埼玉県から自転車を飛ばして駆けつけ、講演のサポートをしてくれました。彼はセクシュアルマイノリティー(性的少数者)であることを私にだけ伝えてくれています。元生徒と元先生という関係を超え、今では私にとってかけがえのない親友のひとりです。

 お盆には、19歳の女子大生と、40代の友達と3人で、東京ビッグサイトで開催されていた「コミックマーケット(コミケ)」にデビューしちゃいました。

 

 3日間で20万人が集まるという大イベントでしたが、コミック事情に詳しい彼女たちの案内で、楽しい時間を過ごせました。彼女たちは学校や職場では、コミケに熱中していることを隠しています。私たちは、秘密の時間を共有し合える大切な親友です。

 自分の母親よりも年上の私を若者たちが気軽に誘い、一緒にいることで、私と同年代の方からは「理解できないから疲れるでしょ」などと言われることもあります。でも、まったくそんなことはありません。お互いに信頼でき、尊敬しあえる人と一緒にいたいという感情は、立場や年齢を超えても確かに存在します。

 さて、日常の保健室には、親友との関係に悩む姿が日々、見かけられます。親友ができない、親友に裏切られた…などなど。親友が自分以外の子と仲良くしているのを見ると嫉妬(しっと)心が高まってしまい「勉強が手につかない」という中学生の男の子もいます。トイレの個室までふたりで入り、恋人のように手をつなぎ、おそろいのファッションでいる女の子の二人組もよく見かけます。

 “親友”は、親から自立しようとし、孤独感と向き合っている思春期には、とても魅力的な存在で、期待が大きくなり過ぎてしまうようです。このごろは、ケータイで親友を四六時中束縛したり、監視しあうケースもみられます。

 お風呂にもケータイを持っていかないと不安という女の子もいます。相手に依存され続けると、うっとうしく思ってしまうこともあります。でも、親友を失うことを恐れて相手に言い出せないストレスを高め、心身症や不登校に陥ってしまう人もいます。

 本来、自分にないものがあるからこそ他人が魅力的に見えるもの。だから、行動や思考が似通ってくればその分、“親友”との関係は早く壊れてしまうのでしょう。

 親友探しの旅は、生涯続きます。進学、就職など、人生のステージが変わるたびに新たな人との出会いがあります。地域活動や旅先で出会った人が無二の親友になることもあるのです。孤独と向き合う強さのある人、知的好奇心の強い人、平和を愛する人、そんな人たちは、考え方や立場の違いに関係なく、どんなに高齢になっても多くの親友に囲まれ輝いています。

  

 
 
 

 

 
 
 

 

 

 

 
 

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