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思春期の心とからだ

No.22

思春期相談員・カウンセラー  

 佐藤 晴世  

 2008/5/22

ネット社会の危険 2

 
プロフに潜む罠
 

 最近、中高生を中心に自分のHPを持っている子どもたちが増えてきました。

 大人の方もプロフを持っている方が多いので その存在をご存じの方も多いでしょう。 ネーミングもなんとなく格好良く、自己開示・自己ピーアールの場として無料のプロフは子どもたちに人気です。

 写真やプロフィールを載せていくうちに芸能人になったような気分にさせてくれる点も魅力のようです。パソコンだけでなく携帯からも見ること、更新することができ、また友人や知人、見知らぬ人までが書き込むことが出来るものもあり、情報ツールとしては魅力的な新しい世界です。

  が、ひとたび悪用すれば、人の心の中に土足で踏み込むことが 簡単にでき、心を深く傷つける凶器になります。学校裏サイトに至っては、ほとんどの大人がその存在さえ把握できていません。 実際プロフや学校裏サイトに膨大な量の悪質な書込みをされて 、不登校になったり、自殺をした生徒がでるなど、社会問題化しています。

 文科省の検討会で「小中学生の携帯所持を禁止する」法案を提出しようという声まで出ています。今のネット現象を決して良いとは思いませんが、中高年の男性ばかりが目立つ審議会(少数の女性も含まれるが)で、子どもたちの心がなぜネットやプロフに向かうのか、その議論無しに即禁止の意見には違和感を感じます。

 

 悪質な書込みをさせないためには、またそうした被害を受けないためにもネット教育を抜きに、携帯を禁止しても、ネットカフェや自宅のパソコンからまた同じことが繰り返されるだけでしょう。

 しかし、改善法が検討されるべき時期にきていることは確かです。どうすれば上手にネットとつき合い、誹謗中傷を抑止できるのか、考えていかなければなりません。

 
人間の特性
 まずなぜ、このような誹謗中傷が簡単にできてしまうのでしょう。

 人間は「相手から見て自分はどう映っているんだろう?」と考える特殊な動物です。普段は礼儀正しい人が、誰もみていないところでは、ゴミを捨てたり、唾を吐いたりすることがあります。「旅の恥はかきすて」ということわざはそういう人間性を的確に表しています。また自分より弱い人に対しても、礼儀をわきまえない立ち居振る舞いをしたりする人がいるように、人間の素顔は一つではないのです。その場によって、あるいは雰囲気によって変わっていくのが人間あり、他の哺乳動物にはない特性なのです。

 そうした人間特有の性質が匿名性を帯びた時に、ひどい書込みを平気でする人間に変身し、またそういう書込みに同調して、面白おかしくして場が盛り上げようとします。より悪質な書込みや攻撃的な書込みに快感を覚えたりすることで、自分の良心に蓋をし、 エスカレートしていきます。社会的な地位の高い人でも匿名性を帯びたネットの世界では簡単に犯罪行為をしてしまうことからみても、誰もが被害者・加害者になる可能性があるのです。

 普段仲良しの生徒が友人の病欠をきっかけにそのプロフに「妊娠したんだ!」とか「男遊びしてるんだ」という書込みをしたり、本人になりすまして 、他の生徒の悪口を書き込む例が報告されています。そしてまた、自らも誰かに意地悪な書込みをされている場合が少なくありません。この中傷行為はエスカレートして同じ仲間、同じクラス、はてはまったく関係ない人たちまでが加わって際限のない書込みに発展して行きます。

 
誹謗中傷は犯罪行為
 

 ネット上に作られたサイトはたくさんの人が集まる架空の居場所ですが、実際は密室の自分だけが存在する場所から発信されます。実名の自分なら決してしない行為でも簡単にボタン一つで、そこまでトリップ出来てしまうのです。子どもたちにこうした誹謗中傷が犯罪にあたることを気づかせるためにも早急に親や学校が協力して、しっかりとしたネット教育が必要になっています。

 まず、匿名でもサイトを運営する会社からアドレスなどの開示を速やかにし、追求する手段を確立し、これを刑法・第230条 (名誉毀損 )にあたる犯罪であることを周知徹底させる必要があります。

 

 他の先進国では、中学生以下の子どもに携帯を持たせるときは インターネットに繋がらないものを持たせるようです。 しかし、日本ではネットに繋がる携帯を持つのが普通になっている上、 子どもの携帯やパソコンにフィルタリングを導入している家庭 は3割程度しかないことも気がかりです。

 日本PTA全国協議会2005度の調査では小学5年生の57%が、中学2年生83%が自由にインターネットにアクセスしています。

 

 子どもに一度持たせた物を取り上げることは至難の業。持つ前の教育こそが、犯罪 の被害者にも加害者にもしない一番の近道だと思うのです。そのためにはまず大人がネットについて学習していく必要があると思います。

 
じっと動かないことのストレス
 

 攻撃的な書込みをする理由の一つにストレスが大きな要因であることも忘れてはいけません。人間はもともと狩猟や採取する能力に長けた動物です。じっと座ってパソコンや携帯を使うようには出来ていないのです。今のような生活スタイルはせいぜいこの10年。子どもの世界に限って言えばこの5年程度の出来事です。

 

 大人も子どもも、脳の中で使うエネルギーばかりが膨大になり、熱をもったストレスは外に放出できないまま蓄積され続け 、結果、発散できる場所として匿名での悪質な書込みが蔓延してしまっているのではないでしょうか。

  何度も子どもたちのストレスについては語ってきましたが、このストレスをどう体の外に放出するのか、これも大きな課題です。子どもが机に向かっていると安心してしまう大人たちに「人間は動物であること」「子どもたちは、本来もっとからだを動かして生きていくことが自然なのだ」ということを思い出して欲しいのです。

 

 つながれなかった若者

 

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