№１

“人間と性”教育研究所　
　　思春期相談員・カウンセラー　　

　佐藤　晴世

プロローグ

　これから思春期を迎える人にも、もう既に思春期を通りすぎた人にも、思春期と言う言葉は、特別な響きがあるでしょう。子どもにとっては、薄暗い部屋を覗くような、不安とこれから起こることへの期待と…。大人にとっては、ちょっぴり秘密の自分の子どもには知られたくない、何とは無しの罪悪感をともなって…。

　どうしてこんなに思春期って、言葉には不思議な魔力があるのかしら。
大人になるためには必要な時期。誰でも通る人生の通過点。わかっているけど、どんなことが起こるのかちょっと心配、。考えただけで憂鬱。
我が子の思春期を支える親も子ども以上に緊張したりして…。

　でも、大人になった人はみんな経験しているはず。それなのに今の大人はどうして我が子の思春期にこんなに動揺するのでしょう。

わたしも自分の思春期と、子ども（三人とも男）の思春期と４回の思春期を身近に経験してきました。　ところで、わたしが子どもの頃、思春期という言葉はあまり耳にしませんでした。
おそらく、まだ日本が貧しくて親たちは子どもを食べさせるので精一杯。勉強も遊びも子どもたちだけの世界。

　

　わたしが思春期を迎えた頃は、大人の世界と子どもの世界ははっきりと線引きされていたせいか、親子の密着度が今ほど強くなかったのかも知れません。だからいろいろな心配事や体調の変化も年齢の近い兄姉や先輩に話して聞いてもらい、あまり神経質にならずに過ごせた、のんびりした時代だったのかもしれません。
　

　ただ大人になってから、あのころがわたしの思春期だったと感じることはたくさんの想い出として残っています。

　今、科学の進歩と情報化社会のおかげで、親も子も、“思春期”という情報をたくさん手に入れることが出来るよになりました。

　思春期のことを情報としてたくさん知ることが出来るようになったこと自体は素晴らしいのでが、思春期への期待？と不安に身体が過剰に反応しているということもあると思います。

　わたしの長男も急激な身心の成長に体調を崩し、親としておろおろした時期がありました。

次男・三男はそうした兄の体験を見ていたせいか、思春期の体調の変化に上手に対応していました。わたし自身、下の二人には、ゆったりと構えて、「思春期は、人生の誰もが通る道。気が付いたら通り過ぎてあれが思春期だったんだなと、思い出すようになるのよ。」などと聞かせて、疲れたらゴロゴロさせ、無気力なときも、イライラしているときも、のんきに構えられたと思っています。これは繰り返し体験していくことが学習につながった例なのです。
　
　これから、少しずつ思春期はなぜ起こるのか、そのとき心や体にどんな変化が起きているのか、わたしの４回の体験をもとに科学面と生活面を織り交ぜながら、お話ししていきます。
　

　

《 №２を読む》