bQ3
 

 

研究所相談員・カウンセラー 佐藤 晴世

 

「シーラという子」 
 
 

 障害児教育の本を探していて「シーラという 子」という本に出会いました。 トリイ・L・ヘイデン著の物語は6歳にして傷害事件を起こし、 トリイの特殊教室に送られてきた子の実話に基づくお話です。

 

 つなぎのズボンと男の子用のTシャツという着替えももたないシーラという少女は毎日オシッコの匂いをさせて登校します。 決してしゃべろうとせず泣きもしない。ときには怒り狂い金切 り声をあげ大暴れする。生まれたときから虐待を受け、心を閉 ざしたまま生きてきた子シーラ。

 その少女が堅く閉ざした心をおそるおそる開きかけたとき、またしても叔父から性虐待を受け、危うく命までも落としそうな 重傷を負うのです。

 しかしトリイや周囲の人たちから献身的に支えられ、深い信頼 の絆で結ばれてゆくのです。

 シーラがトリイのクラスに来て5ヶ月後、過酷にも特殊教室は支援を打ち切られシーラは普 通学級に編入、トリイと別れの日を迎えます。

(続編に「タイガーと呼ばれた少女」)

 こんな過酷な人生を6歳にして送る子どもがいることをみなさんは海の向こうの物語とお感じになるかも知れません。けれど今日本でもシーラと同じような境遇の子どもたちが日々増えています。児童養護施設に入所できず児童相談所で待機している子どもたち。この子達のほとんどは親のない子ではありません。虐待を受け傷ついていたり、その結果問題行動を起こす子どもたちです。 養護施設には入所できたものの、施設にいる福祉士や保育士、 ソーシャルワーカーがどんなに自分の時間を削っても対応しきれないほど問題を抱えた子どもたちが増えているのです。

 その子達には親がいないわけではありません。定期的に面会にくる親もいます。親が来れば、子どもたちは嬉々として喜びを表現します。どんなに虐待を受けていても、いいえ、だからこそ親に捨てられたのではないと感じたい一心で親に甘え、親を慕うのです。

 そして面会に来てもらえない子は荒れて施設の指導員に当たり散らします。 そんなとき抱きしめてあげられるだけの人員がいれば、どんなに子どもたちは慰められるでしょうか。しかし多くの児童養護施設では一人の子どもにだけ関わることができなません。自分たちを規制したり、制限したり…少なく とも全員を抱いてやれないなら一人の子を抱くことを自粛しています。

 それを、やがて自立しなければならない子に「厳しい現実と向き合わせるため」という人もいるでしょう。 しかし指導員の燃え尽き症候群や疲弊による退職を避けるための方策で、子どもの心理的影響を考えてのものだとは思えません。これは学校でも言えることですが、公立の小中学校では一人の 児童に一人の担任が関わりきってしまうことができず、問題を 抱えた子どもたちが放置される原因にもなっています。 今政府は生活支援定額給付金と銘打って二兆円のお金を国民一 人一人にばらまこうとしています。 そんなお金があるのなら、教育の現場や児童養護施設の職員増 員になぜお金をかけることができないのでしょうか。 道をアスファルトにしたり、箱物を作ったり、そんなことにお 金を使うことよりも、心を創ることになぜ投資できないのでしょう。

  施設にいる子や学校で問題を起こす子は私の(あなたの)子ではないかも知れません。けれども私の(あなたの)孫やひ孫か もしれません。 もし時代が違っていたら、私自信だったかも知れません。 そしてそんな子どもを産み育てた彼らも、十数年前、ひとりぽ っちで孤独で悲しかった少年少女でした。その子らが傷ついた まま誰からも顧みてもらえず、そして今も誰からも顧みてもら えずにいるのです。そのことを福祉に携わる政治家や行政の人 たちに問いかけたいと思います。

 

 

感想・ご相談

info@seikyoken.org

 

参考図書

『ママ、パパおしえて!』 定 価    : 1,365円(税込) 出版社    : 子どもの未来社

おとな図鑑 男の子って?女の子って?

〔小学館ワンダーランドブックス〕税込: \840

Q&A子どもの性の相談室 税込:\1,680

性ってなに? 税込:\1,470

 

『せっくすのえほん』

 やまもとなおひで =かんしゅう/みずのつき

        (子どもの未来社/ 1400円)

『おちんちんのえほん』

文=やまもとなおひで 

え=さとうまさこ(ポプラ社/ 1200円)

 

『あかちゃんはどこから』

 ローズマリー・ストーンズ作 

山本 直英訳(ポプラ社/ 1200円)

 

『おかあさんとみる性の本』

全 3 巻 山本 直英監修(童心社/ 1300 円)

『ほんとうに知りたかった カラダのヒ・ミ・ツ』

山本 直英編(講談社/ 1200 円

 

『性はHのことじゃない』

高柳 美知子著(岩崎書店/ 1600 円)

 

『からだっていいな』

      山本 直英著・片山 健画(童心社/ 1339円)