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研究所相談員・カウンセラー 佐藤 晴世

 

(4) 感覚を育てる 〜 体験から学ぶ〜
 
@パブロフの犬 
 

 みなさんは「パブロフの犬」をご存じですか。

ベルが鳴るとエサをもらう体験を繰り返した犬が、ベルが鳴るだけでよだれを流す『条件付け』の有名な実験です。

 同じように条件付けの実験で、スキナーという心理学者は檻の中の動物が偶然、レバーを押すと食べ物が出るという経験をすることで、その後自発的にレバーを押してエサを取る行動を起こす実験をしています。これは行動すると良いことが起こるという結果に基づく自発行動の実験です。

 次の実験は条件付けとは少し違いますが、セリグマンという心理学者が行った実験です。犬を紐でつないで電気ショックを繰り返し与え、次の日別の部屋に移動することが出来る状況下で『嫌なことから逃げ出す』ことを学習させる実験をしたところ2/3の犬は別の部屋に逃げなかったそうです。

 これは「何をしてもダメだ」というネガティブな感覚が植え付けられた結果です。 この二つの実験は人間の経験にも当てはめることができます。

 

 親が、一緒に遊んでくれたり、勉強をほめてもらった経験を持つ子どもは積極的に遊びや勉強をするようになり、お手伝いをして喜ばれると、次の日も「何かお手伝いすることな〜い!」と言ったりします。

楽しい経験が自発的に行動できる子どもへと成長させるのです。

 泣いても抱いてもらえない子どもが泣かなくなったり、虐待児童が親にぶたれても逃げないのはセリグマンの実験のようです。

 

 

A恐怖の条件
 

 ここに一人の子どもがいるとします。この子が日常生活の中で何か失敗をすると、大声で叱られたり体罰を受け続けていると『行動→怖い』と脳に記憶され、失敗を恐れる子どもになります。失敗した内容や、何が悪いことなのかではなく、叱る大人の表情や声が刺激(犬の電気ショックにあたる)となって「自分は何をしてもダメだ」と無力感や絶望感で行動できないネガティブな感性を持った大人に成長してしまいます。

 

 間違ったことや、悪いことをした時、あるいはコップをひっくり返すなどの失敗をしたときは大声で叱ってしまいがちですが、何が良くなかったのか、静かに落ち着いて話してあげることを繰り返し、上手くいったり、良いことをしたときほめてあげれることを繰り返せば、それが良い反復刺激となって、その子本来の行動力を身につけるでしょう。

 

 私の体験でいうと、私の姉はピアノが好きで、どうしても習いたいと両親に願い出てピアノ教室に通いました。当時もともと音楽の成績が悪かった私は姉と一緒にピアノ教室に通わされました。

 姉はどんどん上達し、短期間のうちに小学校の学芸会などでピアノ伴奏するまでになりました。私はというと、もともとじっとしていられない性格もあって、いつも先生に手をピシャリと叩かれ、ますますピアノ嫌い、音楽嫌いになりました。未だにピアノは大嫌い、さわるのもいやになってしまったのです。

 その後、幼児教育に興味を持ち、幼稚園教諭を目指して勉強しましたが、ピアノの時間がどうにも苦痛でしかたありません。なんとか単位を取って幼稚園教諭になったものの、ピアノ嫌いを克服出来ませんでした。幼稚園の学芸会でも子どもの歌や踊りにあわせてピアノの弾かねばならず、この練習は地獄のような苦痛でした。子どもが大好きで、子どもの保育指導や親との対応もなんら問題なく取り組めた私が幼稚園教諭を続けられなかった理由は今にして思えば教室にあるピアノが原因かも知れません。

 

 どうですか? この話し。親は良いと思って子どもに習い事をさせたことが、それが向いている子といない子では、エサにもなり、電気ショックにもなるのです。

 

 子どもにはそれぞれ遺伝的な要素や本来持って生まれた資質がありますから、動物実験からすべての答を引き出すことは出来ません。どのような事が子どもの行動力を引き出すのか無気力にするのか、まだはっきりとわかっていません。虐待を受け続けても、それを跳ね返して成長した人が大勢いることも確かです。

しかし、体罰や暴言、あるいは習い事や勉強の無理強いが、子どもの無気力や引きこもりの誘因だとしたら…ちょっと怖いですね。

 

パブロフ :ロシア  生理学者( 1849−1936)

スキナー :アメリカ 心理学者( 1904−1990)

セリグマン:アメリカ 心理学者 (現存)

参考文献

ヒューマン・サイエンス 心理学アプローチ 杉山憲司・青柳肇編

 

《愛することと叱ること》

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