感染症(STD)を知ろう
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性感染症・その種類と症状

性感染症について
 

 性感染症というと大人のかかる病気と思われがちですが
近年、10代の若年層にも広がりを見せつつあり、その感染スピードは速まる傾向にあります。また、セックスパートナーが複数である場合は二次感染の危険が多く、性行動の活発な10代後半から20代前半の若い層に性感染症が爆発的に増えている一因になっています。

 予防方法 としては、コンドームを正しく使用し、皮膚や粘膜が直接接触することを避けるということで予防効果がありますが、使い方(最初から最後まで使う)が間違っていたり、性器接触以外(オーラルセックス)での感染もあるため、コンドームだけで100%予防することはできません。

 世界中の多くの国々では、コンドーム使用キャンペーンの普及や性感染症/エイズ予防意識の向上により、予防や治療対策が徹底してきており、殆どの先進国では、性感染症は減少傾向を示しています。

  ところが、日本では、エイズ関する警戒心が驚くほど少なく、自分は関係ない。自分だけは感染しないというような、社会的風潮がひろがっているため、性感染症に対する予防意識がかなり低くなっています。

 そのため性感染症予防教育も学校で取り組む時間が少なく、若年層のクラミジアや淋菌感染症の増加現象が起こっています。きわめて感染の可能性の高いフーゾク街でも、コンドームをつけない、無防備の性交渉をする人が増え続けているのが現状です。
 また、若い男女も、コンドームを使わず無防備な性交をしている人がいるため、風俗とは関係のない人の間にも性感染症が広がっています。どんな場合でも、コンドームをつけないでいると様々な性感染症に感染してしまう可能性のあることを忘れないでください。


1)クラミジア感染症

 

 クラミジア(クラミジア・トラコマーティス)は、昔 “眼のトラコーマ”として大流行していたのですが、最近は日常生活の衛生状態が改善したため、すっかり影をひそめてしまいました。しかし、その代わり、今や性器のトラコーマとなって大流行しています。

 女性が感染した場合 、きわめて症状が軽く、 女性の約7割以上が無自覚 。たとえ症状が出ても、わずかにおりものがあったり、不正出血や下腹部痛が出る程度で、感染を自覚出来ないことが殆どなのです。また腟・子宮のみでなく、尿道にも感染がひろがり、膀胱炎症状を出すことも時々あります。
 

 このように症状が少なく軽いため、治療しないで長く放置しておくと深刻な問題を引き起こします。

 クラミジアは本人が気づかないうちに子宮頸管内を通過して卵管に入り、さらに骨盤内に大きくひろがって、『骨盤内感染症』をおこします。そうした場合、卵管がつまり、卵の通りが悪くなり、かなりの人が、数年のうちに、卵管の通過障害による不妊症となってしまいます。
 たとえ妊娠しても『子宮外妊娠』となることがあります。また、感染がさらに腹腔を上行して肝臓の周囲に炎症をおこし、重篤な病状に進行する場合があります。
 

 このように、女性にとってクラミジア感染は今重大な性感染症と言えるでしょう。

 男性は尿道に軽い炎症を起こし、排尿時に尿がわずかにしみたり、濃い分泌物が少し出る程度のことが多く、 男性の約 5 割が無自覚だという報告が あります。ただ、放置すると菌が消えないため、いつまでもパートナーヘの感染源として菌をばらまくばかりか、自分の中でも尿道炎から、さらに体の中に入って『副睾丸炎』や 『慢性前立腺炎』などをおこすようになります。
 

 なお最近は、口唇を使ってのオーラル・セックスがかなり一般化していることから、性器のみでなく、口の中(口腔部)から、クラミジアがみつかることも少なくありません。性器クラミジアに感染している女性の、4人に1人は、口の中からクラミジアが検出されていると報告されています。
 

 オーラル・セックスによる感染は、淋病や梅毒はもちろんのこと、へルペス、さらにはエイズにもおこるとされています。

  クラミジア感染症は現在世界的にもっとも多い性感染症です。

クラミジアに感染している女性は感染していない女性に比べて HIV 感染者との性交渉において 5 倍の確率で感染することが明らかになっています。

2) 淋病

 

 かつて性病の代表のようであった淋菌感染症も、ペニシリンなどの抗生物質普及のおかげで、昔からみると大分感染例が減りはしました。
 しかし、男性の淋菌感染症は、今かなりのひろがりをみせています。症状としては、尿道から黄色膿汁が出て、強い排尿痛があるのが特徴です。
 一方、女性はおりものがでるとされていますが、症状がない感染例が増えています。放置すると、クラミジア以上に、骨盤内感染症に発展し、不妊症になってしまいます。無症状の感染女性からうつされた淋菌でも、男性が感染すると、激しい尿道炎を発生します。
  

3)性器ヘルペス

 報告症例数はクラミジアの約 3 割程度ですが、男女比は1:2 強と、女性が多くなっています。女性が感染しやすい原因は、外性器や子宮頸部の表面が感染しやすい粘膜でおおわれているためと考えられます。
 この性器ヘルペスは、局所にはっきりした病変がない時でも、性器からウイルスを排出していて、パートナーにうつす可能性があります。特に女性の場合、性器が目視しにくく、病変が見落とされやすいことが原因です。子宮頚部の病変は、さらに気付きにくく、パートナーにうつす可能性がかなり高くなります。
 

 症状は、性器に小さな水疱が出て、それが破れると潰瘍が多発し、それが 2 週間ほどつづき、消えます。女性の場合、腟前庭に潰瘍ができると尿が滲みて、排尿時の苦痛に悩まされます。

 ヘルペスウイルスは、薬の服用すれば、症状は治癒しますが一度感染すると神経の奥に潜伏し不活性化して、通常は活動をしませんが、体調が悪くなったときの免疫変化などにより何度も再発をする病気です。神経の奥に潜んでいるため完全な治療方法が確立されておらず、外部に表れた症状を改善する事しか現在のところ出来ません。ですが、不活性時、外部に症状が表れていないときは他人に感染させるような事はなく、再発した場合のみ感染する可能性があります。

4) HIV (エイズ)

 エイズとは、後天性免疫不全症候群を略した言葉でエイズウィルス( HIV 、ヒト免疫不全ウイルス)に感染することにより、病気に対する、人間に備わっている抵抗力(免疫機能)が、正常に働かなくなることにより発症する様々な病気の総称、という意味です。

 感染後、ウイルスは白血球(リンパ球)の中で増殖を続けるので、一度感染すると、いわゆるウイルス保有者となります。ウイルス保有者の全員がエイズ患者となるとは限りません。

 しかし HIV は免疫機能を破壊する為多くの場合、さまざまな感染症を引き起こします。

 

 HIV (エイズウィルス)に感染すると、人の免疫システムが破壊され通常、何ともないカビや細菌、ウィルスといった弱い病原体で病気になっても重篤な状態に陥ります。

 免疫の力がほとんど無い為、弱い病原体に感染したり、弱い病原体による症状を抑えきれずに病気になってしまうような事を「 日和見感染 」といい、これは体力の無い老人や抗癌剤などで免疫が弱っている人にも起こります。

5)梅毒

 梅毒は スピロヘータ (螺旋形の細菌を総称)という細長い細菌で、 コロンブスがアメリカからヨーロッパヘもたらし、かつては世界的に大流行し、性病の代表とされていた性感染症です。しかし、現在ではペニシリン治療で梅毒は影をひそめるようになって来ました。我が国の全性感染症のうち、 0.8 %程度に少なくなっています。ただ最近、ペニシリンが治療薬として使われなくなってきたことの結果として、徐々にまた増えているとされています。 

 この性感染症は、 キスやペッティングなどで感染する場合もあり潜伏期間は3週間から3ヵ月と長いため知らないうちに感染が広がる可能性もあります。   感染後 2 、 3 週間で局部に小さな硬結ができ、それらが崩れて潰瘍となるのが特徴です。そして、 2 〜 3 ヶ月後に特徴的な全身に梅毒疹ができます。
 最近は、あまり局所に症状が出ないでタイプの梅毒もあり、無症候性梅毒として治療しなければなりません。既婚の妊婦での検査では、約 0.2 %( 500 人に 1 人)が梅毒検査で陽性になっています。

6) 尖圭コンジローム

 ヒトパピローマウイルス( HPV )による性感染症( STD )の一種で性交渉により感染します。尖圭コンジロームの症状は感染した後、潜伏期間が 3 週間〜 8 ヶ月と比較的長いのですが、潜伏期間の後、性器や肛門のまわりに米粒大〜指先ほどの大きさの鶏冠状または乳頭状のイボを発症し、イボが互いに接触しあって鶏のトサカ状に赤くなります。このイボに触れると軟らかく出血しやすく、悪臭のある汁が出ます。

 

 手や足の イボ も同じ種類のウイルスで起きるのですが、性器につきやすい型のウイルスによって感染します。小腫瘍(できもの)は、通常それを切除や焼灼して取るのですが、 一度感染すると、再発するケースが多く、非常に治りにくく長い時間を掛けて根気よく治療し続ける忍耐が必要です。

 一方、このウイルスの中には悪性型もあり、それが陰茎癌や子宮頸癌を発生させたり、時には口腔癌、咽喉癌の発生につながることもあるので、最近注目されている感染症です。
 
しかも、この悪性型 ヒトパピローマウイルス ( HPV )の感染流行が、若い人々の間へのひろがりを大きくみせはじめ、その結果として、最近、子宮頸癌の発生が、かなり若年化を起こしているとされています。そのため、子宮頸癌検診も今までの 30 歳からというのではなく、もう少し若い 20 歳代の人々から始めるべきであると考えられるようになってきています。

7)トリコモナス膣炎

 トリコモナスの感染は、女性では、薄い膿性のおりものや外性器のかゆみが出るような、腟炎を起こします。そして、性交痛や膀胱炎様の痛みが出ることも時々あり、不快な性感染症の一つです。
 

 男性も無症状が多いようです。 ゾウリムシやミドリムシなどと同じ単細胞原虫の仲間で鞭毛虫という寄生虫の一種である トリコモナス原虫 が、性行為によって膣内に入り込み感染することによって起こる病気ですが、外陰部やその周辺、子宮及び腔内などにも感染し炎症を起こすこともあり、それも含めて「膣トリコモナス症(膣炎)」と呼びます。産婦人科ではしばしば見受けられる性感染症です。また、性行為だけでなく、公共施設の脱衣場、お風呂のいす、便器、タオルなどで感染することもあり、時には感染経路がまったく不明という場合もしばしばあるようです。

 また、この病気にかかると、膣の自浄作用が低下して、他の 感染症 に感染しやすくなります。典型的な帯下感、掻痒感を訴えることが多いようですが、自覚症状のほとんどない不顕性感染もあり診断はトリコモナス原虫の検出によってなされ、治療は他の性感染症と同様に パートナー も同時に行わなければなりません。

世界に分布していますが、経口感染は認められず、性行為に伴う直接的接触が感染経路と考えられます。この原虫は、成熟した女性の膣(分泌物や栄養の量)に好んで寄生します。婦人科疾患の患者の約 4 割はトリコモナスに感染しているという報告もあります。

8)B 型肝炎

 B 型肝炎ウイルス( HBV )の感染により起こる肝臓の疾患で肝炎になると、肝臓の細胞が破壊されて肝臓の働きが悪くなります。

 B 型肝炎ウイルス( HBV )は世界中で肝臓病の最大の原因といわれておりその感染者数は地球上で 2 億人以上いるといわれ、感染者の一部が肝硬変や肝癌に移行することで、大変恐れられています。

 約 8 割がアジア・太平洋地域に集中しており HBV は性行為により感染する STD( 性感染症 ) の一つでもあります。

 日本における患者の感染経路は海外で感染して持ち帰るケースや性行為による感染者が多く、その他、血液感染、母子感染、注射、輸血、その他覚せい剤のまわし打ち、最近流行の 入れ墨 などまた、医療機関では使用した注射針などの誤刺事故などが挙げられます。

 エイズウイルスやC型肝炎ウイルスより感染率は非常に高くまた、日本での感染者数は 100 万人以上と推定されています。

 一過性感染と持続感染の 2 種類があり、成人が HBV に感染した場合体の免疫が正常に機能していれば肝炎の症状は数か月で治まり HBV は排除されて治癒し、感染症状は一時的なものとなります。

これがB型急性肝炎であり、その後一生免疫が働く事になります。
 年間約 10 万人程度が感染し、急性肝炎全体の約 3 割を占めます。

 一方、免疫機能が落ちている人、あるいは免疫機能不全の人が感染した場合、肝炎の症状はほとんど無いのですが、ウィルスは半年以上かけ肝細胞内で増殖を続けます、このような感染者を HBV キャリアといいます。

ほとんどのキャリアは自覚症状も肝機能異常もないのですが約 1 割は慢性肝炎に移行し、そのうちの更に 2 割程が肝硬変に移行します。
 一過性で無事終わるか、キャリアとなるかは、体内に侵入したウィルスの量と、免疫反応の強さによって変わります。

9)ケジラミ

 ケジラミとは吸血性の昆虫で、名前のとおりシラミの一種です。成虫で体長 0.8 〜 1.2mm 程度のシラミで肉眼でも感染しているか判別できます。 ケジラミの寄生により、陰部にかゆみがでるのが特徴です。時にはケジラミに刺された所が点状に紅くなることで気づくこともあります。陰毛に附いている卵か、またはケジラミそのものを検出することで診断がつきます。
 
陰毛部分などに寄生し血を吸い、患部が激しいかゆみを生じます。成虫は少し茶色がかった白色です。卵は灰色がかった白色で光沢があり、毛の根元近くに産みつけられ、セメントの様な物質で固定されます。

 ケジラミの卵は 1 週間程度で孵化し、寿命が死ぬまで 1 ヶ月と長くはないのですが、 1 匹のケジラミが感染するとその間に 30 〜 40 個程度の卵を産みつけ一度感染してしまうと一気に大量増殖してしまいます。主に人の陰毛に生息して血液を吸って生きています。感染は性交時における陰毛から陰毛への接触感染が最も多いですが、肛門周囲の体毛や、腋毛、胸毛、時にはクリニングスやフェラチオによって口ひげや頭髪にまで寄生してしまう恐れもあります。性交渉以外にも稀なケースですが、接触の多い母子間や家庭で毛布やタオルを介して間接的に寄生する場合もあります。

10)カンジダ膣炎

 カンジダ菌はカビの一種。

成人女性の約10%、妊婦の約30%にカンジダ菌の膣内感染が認められたとの報告があります。
男性に症状が出ることは少ないと言われています。

 多くの人が体内に持っている菌です。
 体内(膣内、腸管など)に持っていることが多い菌で、感染していても健康時には症状が出ないことが多く、免疫力が低下したときに、さまざまな症状を引き起こします。

 おりもの(チーズ状のかたまり)の増加とかゆみが主症状で、膣の洗浄と抗真菌剤の腟坐薬とクリームで治ります。感染経路は 性行為だけでなく、タオルなどの間接感染などの他、出産時の「産道感染」もあります。

 

 

このほか、性感染症 として扱われる病気は、

軟性下疳・ 成人T細胞白血病などその他 20種類以上にのぼります。

 
病原体(大きさの比較)

・トリコモナス   ・カンジダ症   ・梅毒             ・ 性器マイコプラズマ   HIV ・ヘルペス (狂牛病)