感染症(STD)を知ろう

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男性用コンドームについて

丸山 俊蔵

プロフィール
産婦人科医。北海道在住
近隣の中学・高校に

出む いて出前性教育を行う。
     写真はその時に使うペニ スの模型。      


〈1〉性感染症の予防は可能か?
 信頼や愛情だけでは性感染症の予防はできません。性感染症にかかるのは不道徳な行為をしたからではなく、感染予防の行動をとらなかったからです。いかに不特定多数の相手であっても相手が感染していなかったり、コンドームを確実に使っていれば感染のリスクは低くなります。つまり、性感染症にかかるのは不幸なことではありますが、不道徳なことではありません。

 性感染症の予防にはセックスをしないか、あるいはセックスするのであれば確実にコンドームを使うしかありません。ただ、性感染症の中でも、HIV感染、性器クラミジア感染症、淋菌感染症はコンドームを使うことで感染のリスクを下げますが確実ではありません。

 また、性器にクラミジア感染症や淋菌感染症、性器ヘルペスはオーラルセックスによる口腔感染で咽頭部に感染し、それが口唇を使った性行為によって再び性器に感染をします。ですからオーラルセックスのときも、コンドームあるいは薄いゴム膜で性器をおおい、直接の粘膜同士の接触は避けなければなりません。

〈2〉コンドームはどの程度、使われているか?
 東京都の1999年の調査で高校3年生のコンドームの使用率を調べたところ、初回の性交で5割近く、2回目以降の性交では いつもコンドームを使っているのは2割強に過ぎません。高校生でコンドームを使っている人の9割以上が「避妊を意識して」と言っています。ですから、性感染症を意識して使っている高校生はほとんどいないようです。
また、大学生でいちばん最近の性交では、約7割の学生がコンドームを使用していました。しかし、その目的は避妊のためであって、性感染症を意識して使っているのは2割程度に過ぎません。

〉なぜ、コンドームを使わないのか?
 昨今の女性は、日常の生活では男性と対等につきあっています。しかしなぜか、性に関しては従来の「女らしさ」にこだわっているように思われてなりません。嫌われたくない、失いたくないから相手の言いなりになる。自分はコンドームを使いたくても相手がノーと言えばもう使えない。これに対して男性は、性的強さを持った男らしい態度をとりたい。つまり、相手の意向や関係性とは関係なく、自分の思いどおりにしたいという傾向があります。

 男性がコンドームを使わない理由として、面倒くさい、ムードがこわれる、手元にない、快感がそこなわれるなどをあげています。どうもこれは、コンドームを避妊のために使うものとの意識があるために、射精の直前につければよいと考えているのでしょう。でも、いったん挿入して折角ムードが高まったとき、ちょっと待てと性行為を中断して、背中を向けて薄暗いところで慌ただしく着けようとすれば面倒臭いでしょうし、ムードも壊れるでしょう。性的快感もそこなわれるでしょう。

 男性はどんないかつい男でも、結構、神経質で照れ屋で、恥ずかしがり屋です。男にとって、コンドームをつけているかいないかを女性にじっと見つめられ確かめられるのが一番いやなことです。ですから、女性の方から「コンドームを使いましょう」とか「私につけさせて」とか、ちょっと一言声をかけたらどうでしょう。コンドームは男性がつけるものだからといって、男性まかせにするのでなく、女性も自分のからだを自分で護るために言い出す勇気をもちましょう。こんな話し合いができていれば、男性としてはとても気が楽になります。いまやオーラルセックスが普遍化し、セックスの中に遊び戯れの要素が入ってきています。ですから、コンドームも性行為の中の遊び戯れのプロセスに組み入れることができます。コンドームを使うのは相手を疑うというのでなく、お互いに安心するために使うもの。セックスするならコンドームを使うのを習慣にしてほしいものです。

  コンドームはベッドに入ったらただちに勃起したペニスに明るいところで両手を使って堂々と二段階方式で楽しんで着ける。これがコンドームの正しい着け方です。こういう着け方をすると、ムードはそこから二人で盛り上げることができますし、コンドームを着けることで性感染症の不安、望まない妊娠の不安がなくなり、安心感が得られます。不安がなくなり安心することで、性行為に集中でき、喜びは大きくなり、性的快感はむしろ高まります。コンドームを着けると快感がそこなわれるというのは、自分自身の感覚というよりは何らかの情報によって刷りこまれた感覚ではないでしょうか。「コンドームが手元になかったら使わなかった」とも言われます。手元にないのであれば、ペニスの挿入にこだわらず、何らかの方法で射精をうながせばよい。また、いまやコンドームが容易に手に入る方法を考えてやる時期にきているかもしれません。たとえば、コンドームの自動販売機、これは数年前に一度設置された時期がありましたが、若者の健全育成にそぐわないとして撤去されてしまった経験があります。でもいまなら、設置場所を保健センター内とか大学の生協、薬局などに限定して設置することをもう一度考えてみたらどうでしょう。また、大人たちの性に関する価値観を変えることも必要です。たとえば、女子校生がコンビになどでコンドームを買うと、レジで白い目で見られるのではないかとの不安、あるいはコンドームを持っていることが学校や家で見つかると、親や教師にとがめられるのでないかの不安、こんな不安があったら、なかな性交をする前にコンドームを準備することはできません。高校生で5割近くが性交経験がある現状からすれば、コンドームを持っていることは、自分を大切にしている、相手に思いやりがある行為だと大人自身が考えてやってほしいものです。

〈4〉男性用コンドームの具体的使い方
  コンドームは、粘膜の接触の前に勃起した直後から性交の最後まで装着するのが原則です。コンドームは、自分で買い、変質しないように保存や持ち運びに気をつけましょう。コンドームには、使用期限がありますから、まずそれを確かめます。また、日本製のコンドームは、JIS規格に合格していますから、値段によって差はありません。

1. コンドームを取り出すとき、傷つけないようにする。
 コンドームを入れる袋は丈夫ですから、コンドームを取り出すとき、袋の切り口で傷つけないように、袋をあけるときはコンドームを端に寄せて、あけた部分を完全に切り離します。

2. コンドームの表裏をまちがえないように。
 着け始めてから表裏の間違いに気づいても、裏返しにすれば装着はできます。しかし、それをする と、性感染症に感染したり、妊娠したりする可能性が生じます。つまり、射精前に勃起したペニスの先からにじみでる透明などろっとした液体の中にも、精子や病原菌が含まれています。ですから、コンドームの表裏を間違えていったん使い、間違いに気づいてひっくりかえして使うと、コンドームの内側に精子や菌がついたまま使うことになります。こんなときは新しいコンドームを使わなければなりません。


3. 精液だめの空気を抜く。
 
親指と人差し指の腹で精液だめをはさんで、空気を抜くようにしてひねります。ここに空気があるとコンドームが破れる原因になります。

4. 亀頭を露出し、勃起したペニスの根元にまで包皮をたぐりよせ、コンドームをかぶせる。
 思春期のペニスは、勃起した状態でも包皮が多少かぶさっている仮性包茎が大部分です。包皮をむいて亀頭を完全に露出させてから、包皮をペニスの根元にまでたぐりよせ、緊張させてコンドーム をペニスの根元にまでかぶせます。

5. 根元にあるコンドームを包皮ごと先端方向に動かして、再び巻き下ろす。  次に根元まで下ろしたコンドームを、根元にたるんでいる包皮とともにペニスの先端方向に戻します。そうすると、最初にペニスの根元にたぐりよせられていた包皮は伸ばされて、コンドームがまだ被っていない包皮があらわれます。この包皮をピーンと張った状態にして、そこに再びコンドームを巻き下ろします。つまり、包皮のしわを伸ばして、包皮の全表面にコンドームを密着させるように被せることが大事です。

  コンドームを一回ペニスの根元にまで巻き下ろしただけで性交すると、コンドームはペニスの出し入れでペニスの先端の方にずれて外れる原因になります。また、勃起したときに亀頭に少し包皮の被った状態でコンドームをかぶせて性交すると、ペニスを装入したとき亀頭部のコンドームが引っ張られて、突っ張ったような感じになり性感を損ないます。

  逆に、包皮のしわを伸ばして包皮の全表面に包皮とコンドームが一体となるようにぴったり密着さ せた場合は、包皮とコンドームとが一体となって動くため、コンドームにかかる負担は少なく、破れたり外れたりする可能性ははるかに少なくなります。そして、コンドームをつけているという意識がなくなり、性感はむしろ高くなります。

6. 射精したらすぐに抜く。
 ペニスは、射精したら直ちにペニスの根元でコンドームを押さえながら膣から抜きます。射精後、いつまでもペニスを膣の中に入れておくと、ペニスは小さくなり、コンドームとペニスの間に透き間ができて、そこから精液がもれてしまうことがあります。また、コンドームが膣の中に残る原因にもなります。




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