熟年の性を考える

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                             研究員  岩淵 成子
 

犬畜生に失礼な行動がありませんか

 性に関する言い方のなかに「そんなことをする奴は犬畜生にも劣る」という言い方があります。以前は、自制心のない性行動をする者に対する警告的発言だと思い、納得していました。しかし、最近「それって動物に失礼な言い方じゃないの」と思い始めています。

 私は、「生きもの」番組が好きで、よく見ます。鳥類なども興味津々で、同じような番組でも何回も見てしまいます。
  その中には、ほとんどの場合「恋の季節」というナレーションのもと、彼らの繁殖行動が紹介されます。「人間の視点」で見たら珍しい繁殖行動を紹介し、擬人化した解説を加えている場合も多々あります。

 ほ乳類にしろ鳥類にしろ、彼らの行動の立派さは「決して強制をしない」という点です。
以前は知らなかった鳥類の繁殖行動を紹介されるなかで、涙ぐましいまでの雄の求愛行動を色々知りました。必死にさえずりを磨くもの。巣の周りに飾りを敷き詰めた、立派な「マイホーム」を作るもの。プレゼントをあげるもの。個性的なダンスを踊るもの。等々。雌に気に入られようと一心不乱に努力する姿は、人間の男たちに見習わせたいくらいです。

 しかし、それ以上に見習わせたいのは「絶対に雌に強制しない事」です。どんなに努力しても雌の気に入らなかったら「それまで」で、無理矢理雌をねじ伏せて交尾をすることはありえません。
  求愛の時点では「ストーカー」まがいの行為を見せる種もありますが、雌が「拒否」のサインを出したらそれで万事終了になります。それ以上強制的な行為はせずに、次の相手を見つけるための行動を始めます。
  雄が能動的に行動していますが、決定権を持つのは雌で、雌の決定権が絶対です。

 振り返って人間を見たときに、同じ「動物」でありながら、随分外れた行動をしている例があると思います。
  最近は若い人のなかにもDV(ドメスティックバイオレンス=親密な関係の人に対して繰り返される暴力や暴力的行為)が広がっているようですが、熟年のなかにもDVがあります。それも、加害者が意識しないで、何十年も続いている例もあるようです。
  身体に加える暴力は当然ですが、携帯をチェックしたり、外出を制限したりすることも含まれます。「お前はのろまだ」「ばかだ」「働きが悪い」などの言葉の暴力もあります。

 厳密な言い方をすれば、妻の同意を得ないでの性交渉や、一方的な満足だけの性交渉も広い意味でのDVと言えるのではないでしょうか。獣の場合は、雌が尻を地面に付けてしまえばそれが「不成立」のサインで、雄は引き下がることになっているようです。しかし、人間はそれでも強引に迫る場合があります。腕力で迫る場合もありますが、食わせてやっているとか、サービスしてくれても良いだろうなどの言葉での強要の場合もあります。

 広い意味での「暴力」まがいの行為を続けてきてしまっては、これからの「癒しの性」を求めても不成立に終わるでしょう。
  ここまで読まれて気づいた方は、気づいた今の時点からでも、関係の修復に努めることをお勧めします。この先まだまだ長い二人の生活があるのですから。

 
 

 

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