熟年の性を考える

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研究員  岩淵 成子

「エロチカ」を楽しんでみませんか  ー アダルトビデオの効用 ー

「エロチカ」を楽しんでみませんか ーアダルトビデオの効用ー

 

 「アダルトビデオを夫婦で見ましょう」などと書いたら、「過激性教育」と攻撃している勢力から「そらみろ。やっぱり『性教育』なんて言ってポルノを教えるんだ」とばかり「産経新聞」に大々的な記事を載せられて、「研究所」の存亡にかかわるかもしれません。
 しかし、私の担当しているのは『熟年の性』ですから、熟年に向けての話に限定して受けとめていただけば問題はないと考え、あえて「過激」発言を試みます。
 すでにアダルトビデオを夫婦で見ている方々もけっこう居られるかもしれません。「今更言われるまでもない」とお思いの方は読み飛ばしていただいてかまいません。
 「そんなこと考えたこともない。あれは夫婦でなんかとても見るものではない」とお考えの方にちょっと時間を作って読んでいただきたいのです。
 確かに今の日本で製作されたビデオには、夫婦で見るにはお勧めできないシロモノが多いことは事実です。最後は男性支配の象徴のように「ガンシャ」で終わったり、内容が非常に暴力的だったり、挿入だけにこだわりすぎていたりして「スマイル アンド サンクス」(性教協代表幹事の村瀬氏が普及させようとしているフレーズ)の性交とはほど遠い作品がほとんどと言っても過言ではありません。暴力的傾向は近年ますますエスカレートしている現状もあります。「刺激」を求める者にとっては「もっと強く」という要求がありますから、歯止めがなければエスカレートするのは理の当然でしょう。


 シドニー(オーストラリア)に昨夏「研修ツアー」で行ったとき、「売春支援」NGOの方から講義を聴く機会があり、講師との雑談のなかで「日本のビデオはひどい。非常に暴力的でよくない。オーストラリアにはあんなにひどいビデオはない」という話が出ました。彼女は20年以上も「セックスワーカー」(日本の「売春婦」とは状況が全く違うので、あえて原語を使います)の支援を続け、アダルトビデオの製作にも関係している方ですから、日本の作品は世界水準から見ても相当問題のあるものだとの確信を持ちました。


 オーストラリアの場合は、売春が公認されていて、暴力団などの関与は無く、セックスワーカーの健康管理や労働条件が整えられている。お土産物やさんにはカンガルーの精嚢で作った小銭入れが堂々と売られている。(私は一つだけ買ってきました。)「おとなのおみせ」(日本の「おとなのおもちゃ」店よりもずっと幅広い様々なグッズが売られている)に行けば、男性器や女性器のついたナイフ、フォークなどのパーティグッズ、『究極の愛の形』みたいな題の付いた男性、女性ヌードが柄になっている歯ブラシ(つまり、男性ヌード柄を女性が使い、女性柄を男性が使用する)など、など。「謹厳な日本人」が見たら卒倒しそうなグッズが数々あるお国柄です。


 しかし、そこに一本通っている芯は「性は平和に楽しむもの」「楽しみたい人が楽しみ、見たくない人・見せたくない人には見せない」です。ですから、暴力的なもの、支配・非支配関係を象徴するようなものはいっさいありません。しかも、それは制作者の自主性に任せられているのではなく、法律的な強制力を持っています。売春にしても、法律で開店できる場所が指定され、セックスワーカーの労働条件違反がないか常に監視されています。そして監視の一端をNGOが担っているのです。ポルノ本はコンビニでも売っていますが、過激な表紙が子ども達の目に触れないよう黒いビニール袋で書名以外を隠しています。きっちり「棲み分け」をした上で、楽しみたい「おとな達」がおおらかに楽しんでいるという「成熟した社会」です。
 オーストラリア以外でも、外国の作品にはけっこう夫婦で見られるビデオ作品があるものです。
 私は以前アメリカの作品を見たことがありますが、男性器への愛撫の仕方を初めてその作品で学びました。「なるほど。こうやると男性は心地よく感ずるのか。これをもっと早く知っておけば夫との関係がより楽しくなったかもしれない」と残念に思ったものです。
 

 アダルトビデオ(ポルノ本も含まれる)で学習した結果、早稲田の「スーフリ」のような青年達ができてしまったのですから、日本におけるアダルトビデオの罪科は計り知れないものがあり、とてもそれらの存在を容認できるものではありませんが、彼らのような男ができてしまったのは「棲み分け」をきっちりやらせてこなかった我々おとなの責任も大きいわけですから、アダルトビデオだけに罪を着せるのでは気の毒な気もしますが、皆様はいかがお考えになりますか。
 「毒も使いようで薬になる」のことわざにならい、アダルトビデオを夫婦で見て、「挿入」だけにこだわらない、互いの快を追求する新しいセックスの楽しみ方を開拓してみてはいかがでしょう。「ふれあいの性」はまだまだこの先死ぬまで続くのですから。


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