子どものとなり

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小学校教諭  河原 町子

  怒られたラブレター

 

 2年生のTくんは、いろいろ困った行動がみられるこどもだった。ちょっと物を隠すのだ。たいがいすぐに見つかるところに隠すのですぐばれる。場所は、窓の下のひさしの上、給水塔のフェンスの中、靴箱の後ろなど。

 隠すものは、友達のものさし、筆箱、うわばきなど。どうしてそうするのか、事件が起きるたびに聞くのだけれど、黙っている時間が多く、最後には特に理由がないという結論に至るのが常だった。

 

 Tくんは口が重い。それだけでなく、授業時間はつらいだろうなあと容易に想像がつく学力だ。漢字や計算など、家でお母さんが付きっ切りで学習しているものは大体できるのだが、それ以外の学習は本当に難しかった。本を読むことはできるのだが、その内容の理解がむずかしい。作文も一生懸命書くのだが、解読がむずかしい。こんな状態だった。

 

 ある日の放課後、Mちゃんは怒っていた。Tくんにむかって、「やだあ」と大きな声で不満をあらわにしていた。周りを取り囲んでいる子供たちも、Tくんにむかってそんなことしちゃだめだとたしなめている。T君ときたらいつものように下を向いてほっぺをふくらませて黙っている。

 怒っているMちゃんとT君の間に入って事情を聞くことにした。

Mちゃんが小さな紙を私のほうへ差し出しこういった。

 「せんせい、T 君が。私の背中にこんなものを張るんです。」

みると、それは小さな画用紙。その小さな画用紙に小さな小さな文字で「Mちゃん大好き」 と書いてある。ラブレターだ。

 

 Tちゃんは、自分の思いを小さな紙に書いて伝えようとしたのだ。一生懸命かいたことが読み取れるものだ。でも背中にセロテープで貼り付けるという手段はどうか。彼の思いは、単なるいたずらとして一蹴されてしまった。残念。

 今度はちゃんと大きな紙に書いて前から手渡すといいよ。思いを伝えるときは、相手にちゃんと伝わるように内容も形式も考えなくちゃ。

 

 背中に、何かを書いて貼り付けるというのはよくあるいたずらだ。大概は意地悪でするものだ。気になる子にいたずらするときだって、普通はいやなことを書いて貼り付ける。「10円」とか、「ばか」とか。「大好き」っていうのははじめて見たな。やっぱりこれはいたすらだな。つい本音を入れたいたづらといったらいいかな。

  T くん自分の思いをきちんと伝える方法を覚えようね。