"学習会"報告

                                             2018年8月11日

「なぜ「性教育 は、ねらわれるのか?」

ー七生養護学校性教育裁判を振り返り・・・そして、今ー

講師 七生養護学校「こころとからだの学習裁判」原告  日暮 かをる

     

                       

● レポートによる講演 (レジメの補足)

1 七生「ここから裁判」の経過・判決(抜粋)

 

 <背景として考えられること> ()

 <判決から> (抜粋と補足)

〇 2013・11 最高裁で勝訴。原告は教職員29名、保護者2名

   300万円程度の慰謝料・損害賠償を被告が払うことが判決の概要

   判決要旨 ― 性教育は研究の歴史も浅いから、創意工夫を重ねながら実践例を積み重ねて発展していく面がある。不適切とされると、教員を萎縮させ、性教育の円滑な遂行が阻害されることになりかねない。

   学習指導要領は、細目まで決められていない。要領を超える教育することは、明確に禁じられていない限り許容される。大枠を逸脱しない限り実践者の広い裁量に委ねられている。

   発達段階に応じるという点では、より早期に、より平易に、より具体的に、くり返し教えることなどが、応じた教育であるという考え方も充分に成り立ち得る。

  ― 都教委は、教委自体が作成した手引書の書き換えをした。

 

2 再び・・・足立の性教育実践への攻撃

 <経過> (抜粋)

 ・ 2018・3・16 都議会文教委員会で、古賀俊昭都議(自民)が、中学校性教育授業を「不適切」、「問題がある」と指摘。都教委は、関係者への「指導」を進める由の答弁。

 4・13 緊急集会 ― 約120名参加。若い人も多かった。本人が性被害にあった。望まない妊娠をした。など、性教育を受けなかったことにより、トラブルを被った。それぞれで、NPO集団もできている。

 ・ 4・26 足立区民集会開催 ― 100人以上が集まった。

 ・ 6・23 日野市(古賀議員地元)集会 ― 性教育問題を考える若い人たちと、古賀議員を追求する年齢の高い人たちが参加。

 8月末〜 第2回定例都議会では、多くの会派が代表質問の場で、東京での性教育のあり方について討議に立ち、教育行政の役割とあり方を問いただした。 ― 山口かおりさんなど、都の教育委員からは、現場を萎縮させるな。性教育は大事だ。などの声が出されている。

 

3 これらの動きに対抗していくために<人権に基づく包括的性教育を!> (項目のみ)

 〇 日本の「性教育」の現状 

  〇 世界の性教育は

   2009年、「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」を、ユネスコが中心となって開発した

  2018年 改訂版が出された。

  「セクシュアリティ教育ガイダンスによる包括的性教育の枠組み」@〜G ()

 

● 質疑・補足

〇 裁判の状況について ― 2003・4 議会の決定により、週案の作成義務化。など、管理の徹底が始まった。 日の丸・君が代の徹底については、「ここまでやらなくても・・」との裁判官の心証があったようだ。

  勝ち負けはともかく、裁判することに意味がある。裁判では、子どもの実態を話して、授業の必要性を訴えた。

〇 今後について ― 性をおとなが学ぶことが大事になる。学ばないと、偏見に傾いていく。

  戦前の思想と結びついた日本の性教育の遅れがある。

 

 レポート

    なぜ「性教育」は、ねらわれるのか?
             ―七生養護学校性教育裁判を振り返り…そして、今― 
                                    

      2018年8月11日(土)                 
                 七生養護学校「こころとからだの学習裁判」原告 日暮かをる

 1、 七生「ここから裁判」の経過・判決
  <現場から見るとそれは突然にはじまった>
@ 2003年・7・2 都議会での土屋敬之都議(当時民主党)よる質問
      「最近の性教育は、口に出す、文字に書くことがはばかられるほど、内容が先鋭化し、世間の常識とはか      け離れたものとなっている」
石原知事「挙げられた事例どれを見ても、あきれ果てるような事態が堆積している」
      「そういう異常な何か信念を持って、異常な指導をする先生というのは、どこかで大きな勘違いをしている」
 教育長 「不適切な教育」・週案の義務付け・「君が代」「日の丸」の強制
A 7・4 質問した都議たち(土屋・古賀・田代都議)都教委、産経新聞の学校視察
 ・保健室での出来事、翌日の産経新聞報道
 ・都教委は性教育教材・資料・授業記録にとどまらず、公簿類・学級だより・各種会議録等ありとあらゆる資料を大  量に「押収」
B学校経営アドバイザーの設置
C教育計画の変更の強制
Dまるで、犯罪者であるかのような事情聴取
E2度にわたる、厳重注意処分
F通常では考えられない大量の人事異動
Gこの間に「10.23通達」が出される

<背景として考えられること>
  ・性教育に対する禁欲主義的思想
・攻撃のしやすさ
   性教育は教育の中でも発展途上の分野
   障害児教育は教育全体から見ると、一部の世界
・民主教育への攻撃
   こどもを主人公にする学校から、競争原理を持ち込み、管理教育への道
  障害児教育にも差別格差を持ち込む
   障害児教育のリストラ
   →徹底した管理、システム化、マニュアル化がすすむ
 一方で保護者間、教員間、保護者と教員との関係を徹底して分断している

 <判決から>
〇「性教育は教授法に関する研究の歴史も浅く、創意工夫を重ねながら実践実例が蓄積され発展していくという面 があるのであり、教育内容の適否を短期間のうちに判定するのは、容易なことではないと考えられる。しかも、いっ たん、性教育の実践が不適切であると否定され、これを担当した教員に対して制裁的扱いがされてしまえば、そ のような扱いを受けた教員その他の教員を委縮させ、創意工夫による実践実例の開発を躊躇させ、性教育の円 滑な遂行が阻害されることになりかねない」
〇学習指導要領の基準性
  ・「大綱的基準の枠内で具体的にどのような教育を行うかという細目まで定められておらず、定められた内容・方  法を超える教育をするということは、明確に禁じられていない限り許容される」
  ・学習指導要領の「一言一句が法規としての効力を有するということは困難」
  ・「具体的にどのような内容または方法の教育とするかについて、その大枠を逸脱しない限り、教育を実践する者  の広い裁量にゆだねられて」いる。
〇発達段階に応じるということについて
 「むしろ、より早期に、より平易に、より具体的(視覚的)に、より明瞭に、より端的に、より誇張して、繰り返し教える ということなどが『発達段階に応じた』教育であるという考え方も、十分に成り立ち得る」
 「健常な児童・生徒に対する性教育も、従来に比べてより早期に、より具体的に指導することが要請されていると 考えることも可能である」

2、再び…足立の性教育実践への攻撃
  <経過>
 今年3 月 16 日、都議会文教委員会。古賀俊昭都議(自民)は、ある中学校の性教育授業を取り上 げ、「不適切」、「問題点がある」と断じました。 都教委は、関係者への「指導」を進めるという答弁をしました。この、都議会文教委員会以降、性教育のあり方をめぐっての各メディアをはじめ都民の関心と世論は高まりをみせました。
 ・4月6日、関係団体による都教委との話し合い・記者会見
 ・4月13日、緊急集会
 ・4月26日、足立区区民集会
 ・6月23日、日野市で集会
 ・9月3日、学習会予定
 こうした中で行われた第2回定例都議会では、多くの会派が代表質問の場で東京での性教育のあり方について討論に立ち、教育行政の役割とあり方を問いただした。
 ・小池都知事答弁「性教育が人格の完成という教育の大事な課題であり、人間尊重、人権教育の一環」
 ・教育長答弁「児童生徒が性に関する諸課題等について適切に判断し行動できる能力や態度を身につけられるよ  う…専門家とも連携しながら、きめ細かく取り組む」
 今後の東京都の「性教育の手引き」改訂に向けた動きになっていく

3、これらの動きに対抗していくために
<人権に基づく包括的性教育を!>
?日本の「性教育」の現状
  ・2002年頃からのジェンダー・フリー及び性教育へのバッシング(第2回の市民報告書で詳細に報告)の影響が、  現在も学校教育に継続してみられる。バッシングが大きかった地域では、旧来の月経教育さえやめてしまい、初  経期を迎えてもその措置さえも教えないで放置するという驚くべき実態がでている。
 ・日本の学校における性教育が「産む」ということを中心としており、女性の月経などに比べて男性の性の学習が  ほとんどないためである。射精を含め男性の性は、学校教育の蚊帳の外におかれている。その結果享楽的な情  報によって「学ぶ」というより覚えるしかないため、誤解や偏見、また嫌悪にもつながりやすい。
 ・社会科学的性教育が不足している状況のもとで、多様なセクシュアリティをもつ人間相互の尊厳について学んだ  り、相互の人間的関係に学ぶ場は、道徳教育にまかされる傾向がみられる。「いのち」の学習という形で、誕生  について学ぶと、そこでは女性の産む性が中心となり、産んでくれた親への感謝が全面に出されることが多い。
☆子どもは生まれてから学校に上がるまでの間に、物象化され、商品化された性文化にさらされ続け、正しい性教 育受けられないため、性に対する正しい認識を遅らせ、性的搾取に対しても無防備な状況におかれている。周囲 のおとなも、性教育を受けてこなかったため、子どもを性的搾取から護るための知識不足の状況にある。したがっ て子どもとその周囲のおとなは、自らに植え付けられてきた性行為や同性愛への偏見を修正する機会を失ってい る。そのため保護者を含めた性教育を小学校段階から実施する必要がある。
   ※道徳の教科化の中で、おしつけられる社会規範・社会通念
    何のため、誰のための規範?
    多数派(それも作られているかもしれない)が考える通念?
  ※教科書問題

?、世界の性教育は
  国際てきには、性教育・性の学習を保障することは、セクシャル・ライツ(性の権利)の重要な一部になっている。
「性の権利宣言」2014年改訂

  
  2009年、ユネスコが中心となって開発した「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」
  2018年には改訂版が出された。

 

      セクシュアリティ教育ガイダンスによる包括的性教育の枠組み


   @ 関係性
   A 価値、権利、文化、セクシュアリティ
   ? ジェンダーの理解
   C 暴力と安全の保持
   D 健康と幸福のためのスキル
   E 人間のからだと発達
   F セクシュアリティと性の行動            
   G 性と生殖の健康                                   
                                       

  性の権利として乳幼児から高齢期に至るまで生涯にわたって性教育・性の学びが保障されること、学校の役割 が重要であること、包括的性教育の基盤としてジェンダー平等と多様性の理解が不可欠であることは、国際的に は常識となっている。
 
※子どもに「包括的性教育を!」
  しかしその前に大人が学ぶことが大事!
 自覚的に学ばない限り「偏見の性」に身を置くことになります!
 →ネグレクト状態で育ってきた「おとな」による、
   「偏見にみちたジェンダー」「貧しいセクシュアリティ」の再生産
   「慎み深く」「恥ずかしいこと」「秘め事」でいいの?
 →おとなが
  ・性の主人公となっていないことへの気づき
  ・自己のセクシュアリティに向き合うこと
  ・科学的に正しい性知識を身につけ「性の貧困」の連鎖を断ち切ること
  ・暴力(支配)の構造におかれた性から脱却すること

     ※共に学び合いましょう!

 

 


 

"学習会"報告

                                             2018年3月24日

最先端医療技術により自分の性をとりもどすためのリアル

講師  ダイビーノン 代表 飯田 亮瑠

 

● 飯田氏講義

● 学習会参加の子どもたちからの感想紹介

 性の多様性については、教員、保護者の学びも増加している。

 学習会に参加した子どもたちの感想として、「反対もあったんだ」がある。はるな愛、IKKOなど、男の身体で女と感じている存在は知っていたが、女の身体で男と感じている存在を知らなかった。

 会ったらフツーの人だったとの感想もあった。

 

● 言葉を正確に伝える。

 オカマは差別用語。今までの歴史の中で差別されてきた言葉だから。

 LGBTのなかでBは、自分の恋愛相手の性別は関係ない人のこと。

 セクシャルマイノリティは性的少数者で、性的指向と性自認があり、両者は違う。LGBTは違う。Tは、心の性別と身体の性別が違うことで、LGBは心と身体の性別の違いは感じていない。

 身体に違和感を持っている人は、トランスジェンダーといい、その中で病院に行く必要を感じている一部の人を、医者が診断名として「性同一性障害」という。

 トランスジェンダーの場合は、自分の性別に対する不快感、嫌悪感を持つ。反対の性別に対する強く持続的な同一感を持つ。反対の性別役割を求める場合などがある。

 

● 性別に違和感を訴える子どもへのサポート

アイデンティティ未確立のため、ゆらぎの可能性がある。そのため医者は慎重になっている。

今を大事にして、変わることも考えておくことが大事。友人の中に、小・中時代、男になりたいと言っていたが、おとなになったら結婚して子どもを持った人がいる。

 

● 自身の性自認に関わる行動

  女子トイレに入るのが恥ずかしい。男子トイレに入りたいが、入ったら笑われる。多目的トイレに虹マークがあると、自分が見られていると感じ入れない人もいる。社会がシステムを含めて変えたとしても、偏見があれば使えない。

 中学になり、セーラー服を喜ぶ女子を見て、我慢しているのではないと分かってショックを受けた。違和感への相談も、いじめや孤立化を恐れてできなかった。

 おかしい、キモイ、病気だなど、ネガティブコメントを多く受けてきた。身近なおとなからポジティブな情報を受けたかった。

 大学生になり、初めてTであることを知った。言葉の存在を知り、自分と同じ人がほかにもいることが分かって、勇気づけられた。

 生物学的性別が女型であるために、本当の自分に着ぐるみを着ている感じで苦しいのだが、わがままと見られてしまう。Tという言葉を知らなかったから、説明ができない。おとなは知っているのだから、対応が違うのではないか。

 身体を変えたいとペニスを切ったり、胸を切ってしまう子どももいる。

 性別適合手術は、心の体に身体を合わせる手術。

 

● 適合の経過

1 ホルモン療法

 注射で実施。声変わり、ヒゲが濃くなるなどの変化が身体に出て来る。とりあえず男子トイレに入れるようになる。副作用もある。

性欲が強くなるので、コントロールが大変。

心の性で見てもらえるようになるので、ストレスが無くなり、幸せな気分になれた。

2 乳房切除子宮

3 卵巣摘出手術

4 尿道延長手術

5 外性器形成手術

 命に関わるので、少しずつしかできない。自費診療のため、経済的理由もある。トータルでは450万円くらい必要になる。

(6  社会的性別) (身体的適合とは異なるが、社会生活上は重要な問題)

 個別に何がしたいかを確認する必要がある。

 戸籍を定めることは、裁判所に申し立てをすれば、特例で変更が可能になった。

 戸籍の性別は、保険証、パスポートなど身分証明に必要で、生きづらさにつながることが多い。免許証には性別表示が無い。無くても可となる場合もあることはある。

 性別変更には、親の同意書が必要。自分の父親は「金八先生」を見ていたので、なんとかクリアできた。

 自分の味方になってくれる第三者のおとながいるかどうかが大事になる。

 社会的性別については、自分らしいのはどこかを見極めるのが大事。「らしさ」に縛られている場合もある。

 性的指向は女性だったが、今後は不明。

 

● 当事者としての想い

 社会に望むことは、心の性別を最も大事にしてほしいこと。自分のセクシュアリティはどうかを考えることが大事。

 いろいろ大変だったが、なんとか生きてこられた。一番大きかったのは、人間関係。

 アウティングは慎重にすることが大事。アウティングにより、いじめられるかもと恐怖を感じることもある。

 家族、友人、先生などのなかに、一人は肯定してくれる先生がいた。その先生には、性の多様性についての知識があり、当事者の想いを聞いた経験があった。

 生殖は人間の根源的問題で、将来的には、子宮・卵巣など生殖器の再生も可能になるかもしれない。しかし、生殖だけでなく、自分を好きになってほしい、相手を理解したいという思いもある。

 メディアによるイメージがあり、きれいな男になると思っていた。男はオジさんになっていくと考えられなかった。

 ゲイの場合も、ハンサムならば認められるが、オジさんは認められない。人間の生存権とイメージは違う。

 性教育へのバッシングがあるのではと心配している。今は理解あるような社会状況だが、東京オリンピック後にLGBTへのバッシングがあるかもと心配している。

 どんな社会にするかが最終目標である。

 

● 意見交換・感想

 ・ アウティングしたことで自殺する場合もある。信頼している人が秘密をばらして、多くの人が秘密を知っていることは怖い。本人の同意がない場合はしてはいけない。

 ・ 孫の顔を見たい親を裏切るのが辛い人も多い。

 ・ 男らしさを過剰に見せる場合もある。パートナーを連れてきて、男性性を出す場合は、DVのようになることもある。喫煙などで男性性を示す場合もあるが、健康上の理由で手術が不可になる場合もある。男らしさの縛りを受けやすい。

 ・ 手術をしても、残念ながら生殖機能は難しいし、挿入はできない。