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今月のコラム

“人間と性”教育研究所所員

黒澤利時


(2013/3/28更新)

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横浜市の教科書採択

  

 

 ILO・ユネスコ教員の地位に関する勧告」には、「教員は生徒に最も適した教材及び方法を判断するための格別に資格を認められたものであるから、承認された計画の枠内で、教育当局の援助を受けて教材の選択と採用、教科書の選択、教育方法の採用などについて不可欠な役割を与えられるべきである。」とあります。横浜市の教科書採択手続きはこれに逆行するものです。採択地区の小規模化・細分化こそが望まれます。

 横浜市では横浜市全区で同一教科書が採択されています。戦前の国定教科書への流れが加速しています。これは横浜市だけのことでは済みません。全国に波及します。既に東京の高校副読本「江戸から東京へ」に重大な改悪がされました。

 職人は自分で最も使いやすい工具を自分で選びます。教員も同じです。自分の責任において、教師として自分で納得できる教材を使用すべきです。

 

 それでは横浜市全市で採用されている育鵬社の歴史と公民教科書とはどんなものでしょうか?歴史については以前書きました。公民教科書について簡単にふれておきます。

 *日本国憲法の3原則について

 国の主人公は国民である。日本国は永久に戦争しない。全ての人を大切にする。つまり国民主権、平和主義、基本的人権の尊重ということですが、育鵬社の教科書では国民主権よりも天皇の記述が中心です。平和主義には外国からの押し付けとあります。基本的人権の尊重よりも国民の義務とか権利の制限を詳しく書いています。

 *原子力発電については、原発推進に誘導しています。「原子力発電は、、、原子力の技術的な発展や安全性、環境問題や資源問題、軍事保障などを総合的に考える必要」としています。福島の原発事故について全く反省していません。

 *非正規労働者の低賃金、雇用不安、労働条件の劣悪さ、労働環境の悪化を描きながら、その原因や解決策についてはふれていません。

 *女性差別については差別の実態は描かず、家庭の大切さを強調。

 *特殊な用語。育鵬社では、太平洋戦争(大東亜戦争)帰化人、大和朝廷という他社の教科書にはない特殊な用語を使います。他社では、それぞれ太平洋戦争、アジア太平洋戦争、渡来人、(帰化すべき国家がまだ確立していない段階にやってきた人たちは渡来人が正確です。

 横浜市の公立学校でこんな教科書が使われています。10万人の生徒がこれで「学ばされる」のです。採用の仕方も極めて異常です。このような教科書が全国に波及しないようにご協力お願いします。

 いろいろな物の考え方は、白か黒かの二者択一ではなく、子ども自身に自分で考えさせることによって、成長するものです。

 この度の自由民主党の憲法改正案には現行憲法97条「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は人類の多年に亘る自由獲得の成果であって、これらの権利は、過去幾多の試練に堪え現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである」が完全に消えているのです。

 この97条はこの憲法は、人類の永い年月の血と汗と涙から生まれたものであります。決して神様のお恵みなどではない。

 更に重大なことは、本来力の弱い国民が最高法規である憲法を力のある国家に押し付けていたものが、全く正反対に、国民がこの憲法を守らなくてはならないとされていること、「国家によって国民に押し付けられる」ことになるのです。

 これが正式に日本国憲法として制定されるなら、日本の学校教科書は全てこれに右ならえとなるのは、必然であります。戦争は軍隊と武器だけではできません。国民の意思を総動員しなければできません。

  





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