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今月のコラム

“人間と性”教育研究所理事

岩淵成子


(2012/1/10更新)

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「性教育再びの春」を  

―新たな10年のスタートを切る年に願うー


 

 2012年の幕が上がった。

 今年は”人間と性”教育研究所(研究所)設立から20年という節目の年になる。

 1980年に設立された”人間と性”教育研究協議会(性教協) が10周年を迎えた年に、活動の幅を広げる目的で設立されたのが研究所であった。

 研究所は、初代所長の故山本直英先生の「ブルドーザーで荒れ地を開いていくような」(「しのぶ会」での村瀬先生発言)精力的な活動と、1992年の指導要領改訂にともなう「性教育」の学校教育への導入という追い風を受け、日本各地に「科学・人権・自立・共生」(故山本先生提唱)の性教育を押し広げていった。

 しかし、新しい思想が拡大した時には必ず起きる「バッシング」や「揺り戻し勢力による攻撃」により、2002年の指導要領改訂では「性教育」がほとんどできない状況に追いやられてしまった。

 改訂の2年前に山本所長が他界され、研究所の存続が危ぶまれたが、指導要領改悪への異議申し立ても示すべく、副所長だった高柳先生が所長となり、2002年から研究所を継続し今日に至っている。

 高柳所長での10年は、それ以前とはうってかわって、逆風に押されての10年だった。

 「不適切講師」のレッテルを貼られた所長には、講師依頼が激減した。特に東京、神奈川など首都圏がひどかった。

 そのため、継続時には『所報』に載せきらないほどに多かった『アンテナ』(所長、所員の講演等の情報)の記事が、わずか数行にまで縮小され、ついには『アンテナ』を降ろさねばならないまでになった。

 東京では、私も設立に関わった「障害児サークル」メンバーが勤務する養護学校での性教育が、都教委の不当な介入を受け、前年まで称賛されていた内容が、指導要領逸脱という理由のもと、教育内容は改ざんされ、教員は処罰されるという「事件」まで起きた。

 この「事件」が象徴するように、現状はまさしく「冬の時代」で、性教育に関しては、学校教育の場では口を閉ざしてしまったかに見える。

 しかし「冬来たりなば春遠からじ」で、性教育復活への光は見えている。

 前述の「事件」関係者が原告となった「ここから裁判」(「こころとからだの学習」裁判)が、高裁でも原告勝訴の判決が出たことがその一つであろう。

 障害児に対する性教育がどうあるべきかが問われた「ここから裁判」では、都教委が「不適切」として断罪した教育内容は、障害児に対する教育としては「適切」であったことが証明された。 まだ最高裁が残っているが、覆される可能性は非常に低いと考えられる。むろん、関係者をはじめとする世論の応援無しには勝訴は難しいから、気を抜くことはできないが。

 私自身の体験からの実感もある。昨年、自宅近くの小学校に呼ばれて話をした。1回の講演依頼だったが、小学校では低学年と高学年では保護者の要求が異なる。にもかかわらず、1回の講演ではどちらにも少しずつの話となり「帯に短したすきに長し」になってしまう。「分けて話せば深まる」と、実現は困難だと思いながら話をした。

 その小学校では、何と3ヶ月後に、低、高に分けた講演会を追加してしまったのだ。計3回の講演をすることになった。

 初めての経験で驚いたが、依然として保護者のニーズはかなり高いと実感できた。

 学校教育の中では難しくなっていても、保護者のニーズに応える形での展開を考えていけば、広がりは充分期待できると確信した。

 今年の指導要領改訂で「性交については取り扱わない」との文章が、削除されるかどうかにも注目していきたい。

 「性教協」("人間と性"教育研究協議会)からも「削除」の要望が出されていると聞いている。真摯に性教育を進める立場ならば、削除を望むのが当然であろう。削除されれば、復活のはっきりした証となるだろう。

 保護者や子どもたちの要求に応える性教育を地道に進めていけば、再び「性教育の春」がやってくるのではないかと期待したい。

 首都圏を中心とした動きから「春」を感じているが、地方の状況はどうなっているのか、現状を是非研究所に報告していただきたい。所報やホームページを通じての交流を広げていかれる年になることを期待している。

 

 研究所では、高柳所長に代わって、金子副所長が所長になり、高柳所長は名誉所長になるという話が進められている。3月のセミナーには正式に決まることになるだろう。

 今年中には新所長の下で新体制が整い、新たな10年を目指してスタートを切ることになることを願っている





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