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今月のコラム

“人間と性”教育研究所所長

高柳美知子


(2010/11/17更新)

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『あけもどろの空-ちびっこヨキの沖縄戦』(子どもの未来社)


 

  本書は、著者の母親(沖縄戦当時六歳)の記憶を忠実になぞったもので、平和 な家族が、突然襲いかかってきた「イクサ」の中を逃げ惑い、生き抜き、希望を 失わずに立ち直ってゆく姿をあどけない子どもの視線で描く、沖縄戦の生の証言 です。
  先祖代々の土地を守る素朴な暮らしにも字数をさき、その平和な暮らしが破壊 される恐ろしさや、農民が大切な土地から引き離される思いなども痛感させらる 物語となっています。
  著者高柳杉子は、沖縄戦激戦地である沖縄南部の東風平(コチンダ)村の出身 です。「生き残った者の務め」として戦後処理に尽力した家庭に育ちました。東京の立正大学に進学し、卒業後は故郷の沖縄で六年間教員を務め、平和活動など に積極的に参加。その後、大学の同窓生で北海道の高校教師をしている高柳詩織 (私の長男)との結婚により、わたしとの縁ができました。 

 北海道では、朗読サー クルや平和運動に積極的に参加していましたが、不本意な病い(乳癌)に冒され、 療養生活を余儀なくされました。
15年戦争の勃発の年に生まれ、思春期真っ只中の14歳で敗戦を迎えたわた しにとって、「戦争」はまさに“人生の原点”です。元兵士の証言を聞き取って “戦争を知らない子どもたち”に伝えようと、元731部隊少年隊員の篠塚良雄さん、元陸軍兵長の坂倉清さんから、その戦場体験を聞き取り、『731部隊少年隊 員の告白』『あなたは「三光作戦」を知っていますか』を新日本出版社から刊行 したわたしは、杉子さんには「父と母の沖縄戦」をまとめるようにすすめたのでした。杉子さんは、さっそく段ボール箱いっぱいの沖縄関係の本を集め、琉球新
報などから関係のある記事をコピーし、両親への聞き取りも始めました。遺されたノートに書きこまれた参考図書一覧と、それらの本の間にはさまれた付箋やメモをみれは、父と母の沖縄戦を書くことにどんなにか熱い思いを抱いていたかが
うかがえます。しかし、病魔には勝てず、昨年8月、杉子さんは熱い志を遺したまま返らぬ人となりました。本書はその無念さを引き継いで完成したものです。

 思えば、わたしが沖縄と正面から向き合ったのは1970年2月。アメリカの占領下にあった沖縄を日教組婦人部の交流団の一員としての訪問でした。当時、沖縄に行くときは、まず市役所に行って住民票をもらい、パスポート用の写真をとり、半日がかりで種痘をうち、ややこしい横文字の書類を辞書を片手にやっと埋めて総理府に提出、ようやく許可がおりたのは出発の前夜です。“売られた沖縄”の屈辱を思い知らされたのでした。あれから40年ー。『あけもどろの空』が示すように、「沖縄はまだ戦場」なのです。

 『あけもどろの空-ちびっこヨキの沖縄戦』
 刊行会発起人:高柳美知子
 著者:高柳杉子
 協力:仲座ヨキ 高柳蕗子 高柳年雄






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