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今月のコラム
“人間と性”教育研究所副所長
金子由美子

(2009/1/10更新)

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「山本直英」を、確かな形に

 


  この度、研究の副所長の大役をお引受けすることになり、改めて初代所長「山本直英」が性教協を設立し、そして、この研究所を設立するに至る思いから学びたいと、過去の会報や出版物などを紐解いているところです。
  私は、高柳美知子現所長にお声がけいただいたご縁で、性教協さきたまサークルを立ち上げ、その後、本部幹事研究局、研究所所員として、山本、高柳両先生の側近にて、さまざまな学習の機会を与えていただきました。最後にご一緒したのは、0年1月の「第3回日中性教育学術交流会」でしたが、アジア、アメリカ、ヨーロッパなどの数々の海外研修にも同行させていただき、研究活動のリーダーの役割に就かせていただきました。
  山本編集長『性と生の教育』の編集委員にも推してくださり、その編集作業を通して学んだ文章組み立てのコンセプトが、今日の私の執筆活動の原点ともなっています。各号ごとに担当責任者を決めたのですが、28号のタイトルが『どうなっているの?十代の「性と生」』に決まった際、山本先生から「この号はあなたにまかせたい」と抜擢されました。しかし、執筆者に依頼を終えた頃、出版社の事情により残念ながら雑誌は廃刊となりました。時を同じく体調を崩された山本先生が、病床から私にお電話くださり、執筆者にお断りする役割をお引受けしました。「十代を理解するための優れた雑誌になるはずだったのだけど、悪いね。あなたに嫌な役割をお願いすることになって」と、気遣いをしてくださいました。その時、先生ご自身は末期ガンで一番お辛い時期だったというのに。かくして、最後の28号は幻となり、「山本直英」という確かな存在も、「幻」になってしまったのです。
  あれから八年たった今、学校に子どもや親から寄せられる性と生に関する相談や苦情の大半が、携帯やインターネットに起因したトラブルになってきています。プロフなどによる友だちや仲間への誹謗中傷や、ネットで特定な個人を集中して攻撃する「ネットいじめ」などにより不登校に陥る児童生徒もいます。また、警視庁の発表によると、06年に全国で出会い系サイトを利用した事件は1915件で、被害の8割は18歳未満であり、その97%が携帯電話を使用していたものです。平成15年に施行された「出会い系サイト規制法」は、子どもへの男女交際の仲介を禁止していますが、それ以外にも、メル友募集や掲示板など、誰でも自由に書き込める「コミュニケーションサイト」、「学校裏サイト」などで、実名を公表した書き込みをされたり、ストーカー被害なども起きています。携帯メールによりわいせつな画像や、性的な接触によりお小遣いが稼げるといった性情報が日々送りつけられ、好奇心旺盛で性的な興味関心が高い思春期の子どもたちがアクセスしてしまい、不法請求に怯えていたり、性犯罪に巻き込まれていく事例も増え続けています。有害情報や性的な接触から子どもを守るためフィルタリングの方法についての有識者による研究協議は、ようやく始まったばかりです。中学校や高校では、生徒指導部の職員の個人名が生徒のブログに頻繁に出てくることもあり、検索することも指導の一環となっているのですが、次々に新しい方法を編み出す違法業者と子どもの利用実態に追いつかないのが現実なのです。
  今、私は山本先生が託してくださった『どうなっているの十代の「性と生」』と言うテーマを生涯追求していくことが、先生の身近にいたものとしての役割だと思っています。そして、「山本直英」の研究業績を確かな形にしなくてはと考え続けてきましたが、現職に就きながら研究活動や執筆活動をしつつ、山本先生の130冊以上の著作や論文の全てに目を通すには、時間も体力もなく、日々刻々と過ぎていくばかりです。
  いつか必ず実現させることを、副所長就任の決意表明とさせていただきたいと思います。