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今月のコラム
“人間と性”教育研究所副所長
杉山貴士

(2008/11/10更新)

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「地に足ついて動くこと」の大切さ

 

 私が性と向き合うきっかになったのは自分のセクシュアリティとの葛藤から。
 それはいまから17年も前のこと。真正面から性に向き合うことで、私の進路も大きく変化しました。性との出会いは進路をも決める人生にとって最大のものではないかと感じています。
 「人間と性」を真正面から考えることができる環境を保障すること、これは学校にかかわらず、家庭や職場でも考えていかなければなりません。こうした「広義の教育」の考えを示してくださったのが、初代研究所所長の山本直英さんでした。「本邦の性教育を進展する上で後続する同志としても信頼し責任を持って貴学に推薦いたします」と大学院進学のために推薦書を書いてくださった山本直英さん。いまの私が行なっている現場主義の考え方や実践も、山本直英さんから教わったことでした。
 私はいま診療所で同僚たちと、地域の患者さんたちと日々、社会で生活することの難しさを体験しています。患者さんのお宅訪問をするたびに、ひどい格差と貧困、社会で生活することがいかに大変であるか、まざまざとその場に向き合わされます。
 独居の方々、親類がいてもネグレクトされているお年寄りたち、お互い認知症が進んでも夫婦で生活せざるを得なく生活の安全を保つことが難しいなどなど、さまざまな困難を抱えています。それを私たちは医療・福祉・介護の立場から、「その人らしさ」を大切にできる生活を支援することを考えて医療活動を展開しています。現場にいるからわかることを、私は今いる立場から実感しています。またおそらく私の過去に受けた差別的な体験も大きく役立っていると思います。痛みがわかる、分かり合える関係を、患者さんたちと紡いでいます。
 現場であるからわかること、その現場の声をしっかり反映して物事を考え実行すること。地に足着いて動くことが大切と実感する日々です。そして関係を紡ぐこと。これは患者さんともですが、職場の同僚たちとも、自分のセクシュアリティを出していきながら、ゲイであるという、ある意味で、オルタナティブな生き方として、職場に示していくことで、そこで関係を紡ぐ実践をしています。
 現場を大切にしながら、関係を紡ぐこと。山本直英さんのいうような「後続する同志」として恥じないように、広く教育にかかわりを持った活動を、現場で地に足着いてやっていきたいと思っています。