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今月のコラム

“人間と性”教育研究所副所長
金子由美子


(2010/6/15更新)

 bQ8

「私ってなに?」にどう答えるか

ー情報に惑わされる子どもたちに寄り添ってー


 

 私の勤務する保健室には、ぐんぐんと背が伸びる男の子、ぷくぷくと胸やお尻が膨らむ女の子などが日々訪れ、体重や身長計の周りで一喜一憂しています。からだの成長は、うれしい半面、心配ごとも増え、とくに、思春期に現れる性的な成長の二次性徴に関する悩みや不安は、人には相談しづらく、雑誌やネット情報を頼りにしていることが多いようです。でも、そうした情報の中には、間違っていたり、いい加減であったり、個人差があることを無視したものも多々あります。特に、女の子のバストや男の子のペニスは、大きいことがいいことのように扱われ、平均値にこだわる子どもたちもいます。
  研究所のホームページの相談コーナーにも、そうした悩みがたくさん寄せられます。「私は、今中2ですが胸が小さいです。この前お母さんとブラを買いに行って、A-65を買いました。さっそく家でつけてみたらまだゆるかったです。それでもつけたほうがいいですか?もうすぐ林間学習があります。そのときはみんなとお風呂に入らないといけません。周りの子は私が今までブラをしていなかったことを知っているから、もしブラをつけたら、いろいろ言われそうで怖いです。どうすればいいですか?」(中2)
 「ぼくは小学5年です。ペニスが小さくて悩んでいます。平均より小さいと思います。宿泊研修の時みんなにいじられたりバカにされたりしました。どうしたらペニスが大きくなりますか」。
  こうした相談には、佐藤晴世さんが中心になりていねいに回答してくださっていますが、全国には、こうしたホームページや信頼できる電話相談を探すことができずに、深刻に悩んでいる子がたくさんいることでしょう。
  さて、この回答をみなさんも、一緒に考えてみてください。
  本人も、周囲の友達も、みんなと一緒であることや、平均であるべきだと思っているようすが気になりませんか。たとえば鼻の高さなどは、人と一緒だということにこだわらないし、鼻の高さの平均値など知っているのは、きっと整形外科医ぐらいでしょう。

 一方、性に関しては、体験の速さや回数、大きさなどの平均値が雑誌を中心に流されています。必要のない情報で人を不安に陥れ、商品を売る広告もあるので、正しい情報を見極める力が必要になります。また怪しげな性の情報に惑わされ、二次性徴への拒否反応が強すぎる子どもたちの心とからだのトラブルも起きています。「ひげやすね毛か濃いのがいや」「自分は男なのにお尻が大き過ぎる」などと深刻に悩み、心身症や不登校に陥ってしまった男の子もいました。女の子の読む雑誌には、ダイエット記事も氾濫しており、増えている「思春期やせ症」は、月経や成熟していく胸やお尻など、おとなの女性へと成長するからだを、心が受け入れられないことによるものが多いのです。
 性的な成長を「自分らしさ」としてとらえるために、みなさんも一度、「性」という字を国語辞典でひいてみてはいかがでしょう。性質、本質、らしさなどと書かれています。つまり「人」でいえば、その人の性格や人柄、話し方、センス、立ち振る舞い、そしてからだのパーツのひとつひとつの全ての特徴を含んだものが「性」だと言えるのです。思春期は、自分とはなにかを追求し、自分の特徴や性質を受け入れて、自分の正体を自分で肯定していかなくてはならない時期です。自分や同世代の仲間の性的成熟も、その人の特徴や性質のたいせつな一部として認め、一人ひとりが「こころとからだ」の主人公として生きていかれるようにしたいと思います。

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