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今月のコラム
“人間と性”教育研究所理事
佐藤晴世

(2009/12/30更新)

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性教育復活の日を願いながら


 

  私は、東京都下の市立小中学校で特別支援スタッフをしています。その中学で子どもたちに、こんな質問をしました。「最近、一番わくわくしたニュースはなに?」と…。かなり多くの生徒が「オバマさんが大統領になったこと」と答えました。日本の子どもたちがアメリカの大統領が誰になるのか興味をもち、その就任式をわくわくして見守っていたのです。大人である私たちも子ども以上にわくわくしながらアメリカが変化することに期待しています。

 悲しいかな日本人でありながら、日本の総理大臣には何も期待することができません。アメリカの政治の変化がとりもなおさず、これからの日本の変化につながることを期待しているのです。世界中がブッシュのアメリカに苦しめられた八年間でしたから仕方ありません。アメリカでも日本でもブッシュの信じるキリスト教原理主義の煽りをうけて純潔教育が台頭しました。ブッシュの政策は妊娠や中絶に関する女性への助言や情報提供の制限、海外で家族計画の手段としての妊娠中絶を促進するNPOへの援助を禁じ、海外政府への中絶や避妊促進に関する活動が制限されました。そのため途上国の人々は避妊や性感染症の予防に大きなダメージを受けました。

 日本では統一教会や自民党がブッシュの教義に便乗して、私たちが推し進め、日本でやっと定着の兆しをみせた性教育を踏みにじり「過激性教育」「まるでポルノのようだ」と罵り貶めました。 この八年間は日本にとっても世界にとっても失われた八年と言わざるを得ないでしょう。そして昨年暮れにはブッシュの経済政策が残した負の遺産、世界同時不況がおこりました。
 これからもしばらくは派遣労働者や正社員のリストラ、中小企業の倒産など、自立・共生の視点が欠落した不安な情勢が付きまとうことになりそうです。 しかし、アメリカは新しい時代の息吹に湧いています。オバマ大統領は1月23日、人工妊娠中絶を支援・実施する国際団体に対する連邦予算の拠出制限を撤廃するよう命じる大統領令を発令し、「妊娠に関し、女性の選択権を尊重する」立場を取り、望まない妊娠を防ぐため、性教育の徹底を指示しました。前政権時代に中止された国連人口基金への予算拠出も再開される見通しです。オバマ氏は一夜にしてブッシュの政策を大きく方向転換したのです。
 17年前、私は我が子のために性教育を学びたいと思い、小学校で行われた性教育の授業を受け、そこで「弟たちの誕生」というビデオを観、命の歴史を学んでいくうちに「命って、なんて素晴らしいんだろう」と感動しました。その日のことを昨日のことのように思い出します。 またあの頃のように、学校の先生が生き生きと子どもたちに性を語れる日が来るでしょうか。
 アメリカがクシャミをすれば風邪をひく日本ですが、日本の風邪も遠からず回復するでしょう。
 初のアフリカ系大統領が生まれるきっかけは、アメリカ人の老いも若きも、黒人も白人も、一人一人がアメリカを変えたいと思い行動を起こした結果です。一人一人は微力でも、みんなが集まればきっと世の中の流れを変えることができる。私たちもあきらめずに “性は人権”を合い言葉に性教育の実践者として子どもたちの未来のために戦い続けなければなりません。
 願えば叶う…いつかきっとまた性教育が学校現場に堂々と復活する日を待ち望んでいます。
 3月に研究所ブックレットbPとして研究所HPに私が連載した「思春期の性と生」の一部を加筆・編集し「思春期SOS−子どもたちの悲鳴が聞こえますか−」として発刊いたします。思春期支援の一環として、からだ・こころの問題を考える一端にしていただければと思います。